研究実績の概要 |
マラリア原虫は宿主体内で赤血球への再侵入を繰り返すことで増殖する。マラリア原虫は赤血球にRONと呼ばれる原虫分子群を挿入し、原虫表面に発現するAMA1との間で形成される複合体により原虫膜と赤血球膜を架橋することで、赤血球内に侵入する。本複合体の形成を阻害すると侵入が阻害されるため、申請者は本複合体形成の過程を詳細に解析することで、原虫の侵入・増殖を阻害する新たな切り口を見出すことができると考えた。本研究では、本複合体構成分子をコンディショナルにノックアウトし、赤血球侵入前後での各分子の経時的局在変化と複合体形成の有無等を検討することで、AMA1-RON複合体を構成する各分子の機能を明らかにすることを目的とする。 本年度は、AMA1-RON複合体の一つであるRON5をネズミマラリア原虫を用いて遺伝子ノックアウト原虫の作出を試みた。しかしながら、遺伝子組換え原虫を得ることが出来なかったため、RON5はネズミマラリア原虫に必須な遺伝子であることが示唆された。RON5を含め、AMA1-RON複合体が赤血球のどの段階で必要なのかを調べるため、現在ネズミマラリア原虫でコンディショナルノックダウン/アウトシステムを構築中である。また、赤血球侵入型原虫であるメロゾイトを効率良く精製する必要があるため、ネズミマラリア原虫を用いた精製法を確立し、さらに感染力を維持したメロゾイトを精製する方法を開発した(Mutungi J. et al., Molecular & Biochemical Parasitology 2015)。さらに、赤血球侵入時に関わるカルシウムの局在と濃度を測定するため、カルシウムセンサーとしてYellow Cameleon-Nanoをマラリア原虫に導入し、カルシウムセンサーの有効性を実証した(Pandey K, et al., Scientific Reports 2016)。
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