研究課題
寄生原虫Trypanosoma cruziを病原体とするシャーガス病に対する現行の治療薬は、効果や副作用の点で実用的でなく、新規治療薬開発が急務である。本研究は、申請者らの独自研究を発展させ、T. cruziの分裂増殖・変態・細胞侵入などを制御するCa2+チャネル(TcIP3R)を介するCa2+シグナリングを標的とした治療薬開発のための基盤研究を行う。平成28年度の研究成果は下記である。 1、細胞内カルシウム濃度([Ca2+]i)依存的に蛍光を発するタンパク質(R-GECO1:red fluorescent, genetically encoded Ca2+ indicator for optical imaging)を発現するT. cruziの作製に成功した。 2、R-GECO1発現原虫の蛍光シグナルを生活史の各ステージで比較し、生活史で大きく[Ca2+]iが変動することを明らかにした。さらにそのシグナル強度はTcIP3Rの発現量と正の相関を示すことが明らかになった。また、Ca2+濃度が低い宿主細胞質内に寄生するアマスティゴートが高い[Ca2+]iを維持し続けることが可能であることが、長期間の生体イメージングにより明らかになった。 3、TcIP3R遺伝子の一部を破壊し、発現量を1/3にした原虫(SKO原虫)にR-GECO1を発現させ、WTと比較したところ、蛍光シグナルも約1/3に減少していた。 4、以上の結果は、TcIP3Rが[Ca2+]iの決定因子であることを示すと共に、R-GECO1発現原虫はシャーガス病の治療薬スクリーニングに有望であることを示している。
1: 当初の計画以上に進展している
各専門家との研究連携もうまくいっており、当初の計画以上に研究は進展している。
研究は当初の計画以上に進展しているので、計画を前倒しにして推進する。
当初の研究計画よりも条件検討の実験が少なくてすんだため。
研究計画を前倒しして、使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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