研究課題
マラリアは、年間羅患者数2億人以上、死亡者数43万人以上にもおよぶ世界最大の感染症の一つであり、様々な対策がなされているがその制圧には至っていない。ハマダラカにより媒介されるマラリア原虫は、吸血時にスポロゾイトがヒト体内に注入され、原虫はまず肝臓に寄生(肝内型)・増殖後に、赤血球に寄生(赤内型)する。この肝内型はマラリア原虫の寄生成立には必須の発育期であり、原虫種により増殖しない休眠期がある一方で、増殖をする場合には真核生物全体でもトップグループの高速増殖を示す。この様な高速増殖を可能にするには、様々な要素(材料・代謝・分子)が必要となるが、肝内型原虫のこれら詳細な分子メカニズムに関してはほとんど明らかとなっていない。そこで本研究課題では、これらの分子メカニズムのうち核の制御にまず着目し解析を行った。核の増殖制御に関連する因子のうち、特にヒストン制御に関連する分子群の詳細なin silico解析を実施した。マラリア原虫種間におけるゲノム上での保存性、ドメイン構造の違いなどを詳細に比較したところ、原虫種間で酵素群の保存性に大きな違いが認められた。そこで本年度は、これらを検証するため齧歯類特異的マラリア原虫(P. berghei)を用いて各酵素遺伝子欠損株・ステージ特異的な過剰発現を行う変異株の作製を試みた。得られた変異株は、野生型とは増殖速度が異なり、表現型を示す可能性が得られた。また詳細な表現型解析のため、電子顕微鏡を用いた解析に着手し固定条件・観察条件の検討などを実施し良好な結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
齧歯類特異的マラリア原虫(P. berghei)を用いた各標的酵素の遺伝子欠損株の作製および各ステージ特異的な過剰発現を行う変異株の作製を試みたところ、予想外の結果が得られた。今後、詳細な解析により精度の高い結果を得ると共に、変異株の作製を継続する。また複数の異なる電子顕微鏡を用いた解析に着手し、固定条件・観察条件の検討などを実施したところ、良好な観察結果が得られた。
今年度得られたた各標的酵素の遺伝子欠損株および各ステージ特異過剰発現株の詳細な解析を行う。また各種の電子顕微鏡を用いた観察を実施し、野生型および各種変異株などを用いた観察・表現型解析を実施する。また、マラリア原虫の核を制御する分子メカニズムを詳細に解析するため、各種の分子マーカーを蛍光タンパク質との融合タンパク質として発現する原虫株の作製を試みる。
今年度は、一昨年度のからの繰越金などがあったため次年度使用額が生じた。
来年度は、得られた変異株の詳細な解析を行うため、分子生物学試薬・細胞生物学試薬・実験動物費用など、当初の計画よりも翌年度に費用が集中する可能性があり、今年度の予算と合わせて使用する予定である。
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