研究課題
本研究では、システインパースルフィドをはじめとした活性イオウ分子種のユニークな化学反応性に基づくオートファジー制御の分子メカニズムを解明し、その細胞内殺菌と感染防御における役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、各種活性イオウ分子種の細胞内動態の解析と活性イオウ分子種によるオートファジー制御の解析を行った。質量分析(LC-MS/MS)を用いた活性イオウ分子種の定量解析系を用いて各種培養細胞(マウスマクロファージRAW264.7細胞、ヒト肺がんA549細胞など)を解析した結果、システインパースルフィド、グルタチオンパースルフィドをはじめとした各種活性イオウ分子種が様々なレベルで細胞内に存在することが分かった。これらの活性イオウ分子種の細胞内レベルは、シスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)およびシスタチオニンγ-リアーゼ(CSE)のsiRNAによるノックダウンにより、著明に低下した。また、CBS、CSEをノックダウンした細胞では、共焦点レーザー顕微鏡による形態観察およびLC3のウエスタンブロット解析により、オートファジーが誘導されていることが示された。さらに大変興味深いことに、細胞内の活性イオウ分子種の生成動態を詳細に解析した結果、CBS、CSE以外に、タンパク質翻訳に共役した新たなシステインパースルフィド産生系が存在することが明らかになった。これらの結果から、細胞内で生成するシステインパースルフィドなどの活性イオウ分子種は、オートファジー誘導制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画で予定していた各種活性イオウ分子種の細胞内動態の解析、および活性イオウ分子種のオートファジー制御に制御の解析について、ほぼ計画どおり実験を実施することができ、さらに、細胞内における新規なシステインパースルフィド産生系の存在を見出すなどの研究成果が得られたため。
研究遂行上の問題はなく、当初の研究計画は変更なく研究を推進していく予定である。また、新規なシステインパースルフィド産生系の発見があり、活性イオウ分子種の生理機能解析において当初計画よりも大きな成果が得られるものと考えている。
実験を効率よく行うことにより、予定よりも少ない経費で当初研究計画を実施し研究成果を挙げることができたため。
本年度の研究の中で、当初予想していなかった新しい活性イオウ分子種産生系の発見があった。本研究の主題である活性イオウ分子種によるオートファジー制御の分子機構をさらに詳細に解明するために、この新規活性イオウ分子種産生系の解析を追加し、そのための経費として使用する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (8件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Arch Biochem Biophys
巻: 595 ページ: 140-146
10.106/j.abb.2015.11.008.
Biochemistry
巻: 55 ページ: 751-761
10.1021/acs.biochem.5b00774
J Clin Biochem Nutr
巻: 58 ページ: 91-98
10.3164/jcbn.15-111
動脈硬化予防
巻: 14 ページ: 66-71
Respiratory Medical Research
巻: 3 ページ: 70-75
臨床免疫・アレルギー科
巻: 63 ページ: 502-506
生体の科学
巻: 66 ページ: 396-397
http://www.toxicosci.med.tohoku.ac.jp/