研究課題
本研究では、システインパースルフィドをはじめとした活性イオウ分子種のユニークな化学反応性に基づくオートファジー制御の分子メカニズムを解明し、その細胞内殺菌と感染防御における役割を明らかにすることを目的としている。昨年までの研究において、システインパースルフィドなどの活性イオウ分子種がオートファジー誘導に関わる8-ニトロ-cGMPのシグナル活性を制御していること、および細胞内に各種活性イオウ分子が様々なレベルで存在していることを明らかにしてきた。本年度の研究において、タンパク質翻訳に共役した新規活性イオウ分子種産生系について詳細な解析を行ったところ、これまでに知られていたシスタチオニンβ-シンターゼやシスタチオニンγ-リアーゼよりもシステインパースルフィド産生活性が高く、同産生系が細胞内システインパースルフィド産生の大部分を占めていることが分かった。また、ネズミチフス菌を感染した細胞のオートファジー誘導における8-ニトロ-cGMP関連シグナル経路の解析を行い、感染細胞内において、オートファゴソーム内のサルモネラ菌体が著明にS-グアニル化を受けており、S-グアニル化を受けた菌体がLC3やp62と共局在することが示された。さらに、S-グアニル化タンパクの詳細な解析を行った結果、線毛関連タンパク質を含めた様々な菌体タンパク質がS-グアニル化の標的となることが分かった。これらの結果より、細胞内活性イオウ分子種と8-ニトロ-cGMPにより感染細胞におけるオートファジー誘導が制御されていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画どおり感染細胞内のオートファジー誘導における活性イオウ分子種の役割およびそのシグナル伝達機構の解析を行い成果を得ることができた。また、活性イオウ分子種の細胞内生成に関して新規システインパースルフィド生成系の発見があり、おおむね順調に研究が進展していると評価できる。
研究は順調に進展しており、当初計画に大きな修正の必要はない。新規システインパースルフィド産生系の役割の解析や菌体が産生する硫化水素、活性イオウ分子種のオートファジーへ影響の解析など、研究課題の目的の達成に向けて当初計画を大きく変更することなく研究を推進していく。
研究実施に関して実験計画の見直しを行い効率的に実験を行った結果、当初計画よりも少ない経費で研究成果が得られたため。
活性システインパースルフィドによるオートファジー制御機構の詳細な解析、特に新規システインパースルフィド産生系の役割についての解析など、本研究の目的達成のためのさらに詳細な解析を行うために使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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