研究課題
基盤研究(C)
細菌が多様な環境を生き抜いていく際、各々の細胞が全て生き残る必要はない。一部の細胞が発現させる鞭毛タイプを確率的に切り換えて宿主免疫を回避したり、DNA取り込み装置を発現させて外来遺伝子を獲得したりする。このような場合、通常発現していない遺伝子が一部の細胞で発現する(限定的発現)。申請者らは多数の限定的発現遺伝子を見出し、esp遺伝子と名付けたが、その多くの機能が不明である。本研究ではそれらの解明に取り組み、esp17が乾燥耐性を担うことを示す遺伝学的な証拠を得た。
細菌分子遺伝学
本研究で対象とした黄色ブドウ球菌は乾燥に強く、乾燥表面で数ヶ月以上生き残る。ヒト-モノ(例えばドアノブなど)-ヒトという感染経路を成立させる上で乾燥耐性は重要な特質であるが、乾燥耐性の実際のメカニズムは実はよく分かっていない。esp17は高浸透圧での増殖には必要ないものであった。すなわちesp17は未だメカニズムが不明な乾燥耐性に浸透圧耐性以外の仕組みで寄与する因子である可能性がある。その仕組みについて今後明らかにすることでこの重要なヒト病原細菌の新たな側面が明らかになる。