研究課題/領域番号 |
15K08462
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研究機関 | 神戸市環境保健研究所 |
研究代表者 |
野本 竜平 神戸市環境保健研究所, その他部局等, 研究員 (60642238)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Streptococcus / gallolyticus / 比較ゲノム解析 / 病原性 / ゲノムワイド関連解析 |
研究実績の概要 |
本研究では新興の人獣共通感染症起因菌でありヒトの大腸癌との因果関係が予測されているStreptococcus gallolyticus の病原性因子及び腫瘍細胞の活性化因子の解明と、それらの獲得・進化機構の解明を目指す。そのために。1) S.gallolyticus 野外・臨床分離株のゲノム配列を取得し、各病原性候補遺伝子の分布を明らかにし、その中でメタデータとの比較から実際に疾病の発症や宿主細胞への接着に関与すると想定される遺伝子の候補を選定する。2) 培養細胞や実験動物を用いた解析から、1)で予測された候補遺伝子の発現の差異が細胞への接着や炎症誘導性及び病原性に与える影響を明らかにする。3) 2)で絞り込んだ遺伝子の組換え体を通した解析から、S.gallolyticus の病原性発揮機構を解明すると共に、どのような相互作用ネットワークで宿主細胞の炎症を誘導し、ひいては腫瘍細胞形成促進へとつながるメカニズムを解明する。本年度は昨年度までに得られたゲノムデータに更に20株のS. gallolyticus菌株を追加し、詳細にコアゲノム解析を実施した。S.gallolyticus には現在3亜種が提唱されているが、全ての亜種間でAverage Nucleotide Identities (ANI)値は同種と判断される95%以上を示した。SNP系統樹、アクセサリー遺伝子マトリックスによる系統樹、コアゲノムアライメント系統樹を作製しそれぞれの系統的位置の妥当性を評価した。クラスター解析の結果、subsp. gallolyticuには主に3系統のクラスターが確認されたが、subsp. pasteurianusのグループは全てが単一クラスターに分類され、クローナルナ集団であることが示唆された。解析した全てのsubsp. pasteurianusはsubsp. gallolyticuに存在するバイオフィルム形成に関与する遺伝子群を欠いており、この事が、それぞれが引き起こしやすい臨床症状の違いに繋がる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書の通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
抽出されたバイオフィルム形成関連遺伝子群の機能について、細胞を用いた接着実験により表現型を確認する。菌株の由来によって、宿主・臨症状の有無、亜種などを詳細に区別しゲノムワイド関連解析により、それぞれの表現型に特異的な遺伝子型を調査する。ゲノムの利アレンジメント解析により、菌株間、亜種間での相同組換えが起こっているかどうかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が研究開始当初年度より所属を移動し、計上していた備品の購入の必要がなくなった助成金が繰り越されているため。その余剰分を利用し今年度に解析する予定の菌株を増加する予定だったが予定より集まった菌株が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
現在新たな解析対象菌株を収集中であり、次世代シーケンサー解析を含めた核酸配列解析用試薬として使用する。
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