研究課題
本研究では新興の人獣共通感染症が疑われる細菌であり、ヒトの大腸癌との因果関係も予測されているStreptococcus gallolyticus (SG) の病原性因子及び腫瘍細胞の活性化因子の解明と、それらの獲得・進化機構の解明を目指す。そのために。1) SG 野外・臨床分離株のゲノム配列を取得し、各病原性候補遺伝子の分布を明らかにし、その中でメタデータとの比較から実際に疾病の発症や宿主細胞への接着に関与すると想定される遺伝子の候補を選定する。2) 培養細胞や実験動物を用いた解析から、1)で予測された候補遺伝子の発現の差異が細胞への接着や炎症誘導性及び病原性に与える影響を明らかにする。3) 2)で絞り込んだ遺伝子の組換え体を通した解析から、SG の病原性発揮機構を解明すると共に、どのような相互作用ネットワークで宿主細胞の炎症を誘導し、ひいては腫瘍細胞形成促進へとつながるメカニズムを解明する。本年度は昨年度までに得られたゲノムデータに更に20株のSG菌株を追加し、詳細にコアゲノム解析を実施した。これまでの解析で計99株のゲノム配列を用いて解析を実施した。SNP系統樹、アクセサリー遺伝子マトリックスによる系統樹、コアゲノムアライメント系統樹などの系統解析では、SG は全ての株が他のStreptococcus属から独立した系統的位置にクラスターを形成した。また、コアゲノム解析結果を基にメタデータの特徴と遺伝子の有無を関連付けるゲノムワイド関連解析を実施したところ、ヒト由来株と動物由来株に特徴づけられる遺伝子は見出せず、本菌が人獣共通感染症を引き起こす可能性が示唆された。また、莢膜の生合成関連遺伝子群やグルカンの生合成遺伝子群に多様性が見いだされ、その多様性が本菌が引き起こす臨床症状の違いの原因となっている可能性が考えられた。本研究を通じてSGが生体内でどのような挙動で病原性を発揮するのかに関して一定の知見が得られた。
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The Journal of Veterinary Medical Science
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PLOS ONE
巻: 12 ページ: -
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0180991