研究課題
ギラン・バレー症候群(GBS)では、主要な先行感染病原体としてグラム陰性桿菌Campylobacter jejuniが同定されて以来、最も病態が明らかにされた自己免疫疾患と言えるまでになった。一方、GBSの臨床亜型であるフィッシャー症候群(FS)においては主要な原因病原体としてHaemophilus influenzaeが同定されている。本研究では、H. influenzae感染後FSでもC. jejuni腸炎後GBS/FSと同様の病態が存在するのかについて検証することが目的である。GBSやFSでは抗ガングリオシド抗体が自己抗体として検出され、本抗体がエフェクター分子として末梢神経障害を惹起すると考えられている。抗ガングリオシド抗体が補体活性化能を有するIgGサブクラス(IgG1~IgG3)に属するために、抗ガングリオシド抗体が末梢神経上に結合したことに引き続き補体系が活性化する結果、membrane-attack complex(MAC)を形成し末梢神経障害に至ると想定される。平成28年度は血中抗ガングリオシド抗体のIgGサブクラスを検討し、H. influenzae感染後FSはC. jejuni腸炎後FSと同様にIgG1が主体であり、H. influenzae・C. jejuni以外が原因となったFSではIgG3が主体であった。平成29年度はさらに血中MAC濃度を測定した。その結果、血中MAC濃度はH. influenzae感染後FSとC. jejuni腸炎後FSとの間で有意差はみられなかった。また、軸索障害の程度の指標として血中タウ濃度を測定し、H. influenzae感染後FSとC. jejuni腸炎後FSとの間で有意差はみられなかった。以上の結果は、C. jejuni腸炎後FSと同様の病態がH. influenzae感染後FSでも存在することを強く示唆する所見である。
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