研究課題/領域番号 |
15K08466
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
後藤 正道 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80325779)
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研究分担者 |
鈴木 幸一 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (20206478)
圓 純一郎 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (30587879)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗酸菌感染症 / 末梢神経障害 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
ブルーリ潰瘍(Buruli ulcer)は我が国でも報告が増加している抗酸菌Mycobacterium ulcerans感染症であり、無痛性の深い皮膚潰瘍が形成される。本研究では培養シュワン細胞へのmycolactone投与による細胞障害とその成立機序を検索することにより、ブルーリ潰瘍における無痛性病変成立のメカニズム及び神経障害機構を解明することでブルーリ潰瘍の病態の解明と治療への展望を明らかにする。今年度は以下の研究を実践した。 1)線維芽細胞(L929)とマクロファージ(J774A.1)へのmycolactone投与実験 線維芽細胞とマクロファージへmycolactoneを投与して、細胞形態の変化、細胞膜破損の有無、アポトーシスの有無などを検討することで、先行研究の妥当性について確認した。化学合成mycolactone A/B(ハーバード大学のProf. Yoshito Kishiより供与)を、培養線維芽細胞とマクロファージに投与し、細胞障害を引き起こすmycolactoneの量を決めた。細胞障害の評価としては、形態学的観察、トリパンブルー染色による細胞膜傷害の定量、固定した細胞のTUNEL法によるアポトーシスの定量などを行った。また、Western Bloting及び蛍光顕微鏡を使用した解析によるアポトーシスの検出を行った。 2)培養シュワン細胞(SW10)へのmycolactone投与実験 培養シュワン細胞へmycolactoneを投与して、細胞形態の変化、細胞膜破損の有無、アポトーシスの有無などを検討し、L929、J774への投与結果と比較した。 さらにヒトシュワン細胞、神経芽細胞、内皮細胞、筋芽細胞にも同様にmycolactoneを投与して、Western Bloting及び蛍光顕微鏡を使用した解析によるアポトーシスの検出を行い、SW10との比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画通り進行しており、現在までの経過について論文を執筆し現在追加データについて再実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1)M. ulcerans及び他の抗酸菌による感染とmycolactone投与との比較 培養シュワン細胞・線維芽細胞・マクロファージにM. ulcerans及び他の抗酸菌(M. marinum、M. avium等)を感染させ、細胞内への菌の取り込み、細胞形態の変化、細胞膜破損の有無、アポトーシスの有無などを検討する。これらの結果と、mycolactoneによる培養細胞の変化との比較を行うことにより、シュワン細胞と他の細胞の細胞障害パターンの違いを明らかにする。 2)Mycolactoneの細胞への侵入経路もしくは、受容体・シグナル伝達経路の同定 Mycolactoneの細胞への侵入経路もしくは、受容体・シグナル伝達経路を同定する。平成28年度の結果を元に、mycolactone により引き起こされる細胞動態の詳細な解析を行う。まず、蛍光標識したmycolactone を用いて、細胞への侵入経路や局在を明らかにする。また、DNAマイクロアレイ解析による網羅解析を行い、末梢神経障害に寄与する遺伝子発現変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文執筆が遅れており、論文投稿料として計上していた270,000円が未使用となっている。 また実験に必要な試薬や細胞の購入費用が一部次年度に持ち越しとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬類一式(組織切片作成、免疫組織化学、PCR)、及び細胞培養試薬一式を早急に購入して実験を継続していく。
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