研究課題/領域番号 |
15K08467
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
Toma Claudia 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40325832)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レプトスピラ / 感染 / 尿細管上皮細胞 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
病原性レプトスピラ(Leptospira interrogans)は多くの哺乳動物に感染し、腎尿細管で増殖し尿中へと排出されが、本菌の尿細管上皮細胞付着・持続感染機構の詳細についてはほとんど理解されてないのが現状である。我々は、レプトスピラの上皮細胞感染戦略を明らかにすることを目的にし、本菌が腎臓に定着するには、尿細管上皮細胞のバリアーを回避する機構が存在するという仮説を立て研究を進めてきた。 腎臓から分離したL. interrogans 血清型Manilae UP-MMC-NIID株(Low Passage, LP)と人工培地にて継代を長期間繰り返すことによって得られた弱病原性株(High Passage, HP)のTCMK-1上皮細胞の感染を行い、HP株で感染させた細胞では次第に細胞死が認められたため、平成27年度は阻害剤を用いた感染実験を行いその細胞死経路を解析した。さらに、蛍光免疫染色にてアポトーシス誘導因子(AIF)がHPで感染させた細胞では核に移行したため、HPが誘導する細胞死は、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ-1(PARP-1)依存的であることを明らかにした。平成28年度はCRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子のノックダウンを試みたが、細胞のノックダウンに成功しなかった。また、PARP-1の依存的細胞死経路で活性化される分子をウエスタンブロティングにて解析したが、LPまたは HPで感染した細胞の差を認めなかった。 そこで、マウスの感染モデルを用いた実験を行い、経時的に腎臓に移行する菌をリアルタイムPCR法で定量化するとともに、TUNEL染色や蛍光抗体による組織染色を行い、HPで感染させたマウスでは尿細管上皮細胞の細胞死が誘導されているかを調べることを試みた。しかし、HP株は腎臓に移行する前に血中で排除されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子のノックダウンを試みたが、感染実験に使用可能な細胞が得られなかった。このシステムを色々な条件で検討したため計画全体がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.トランスポゾン挿入変異株の解析:海外研究協力者がトランスポゾン挿入変異株のライブラリーをスクリーニングした結果、マウスの腎臓の定着能を失った5株を単離した。これらの変異株を用いてマウスの感染実験を行い、経時的に腎臓に移行する菌をリアルタイムPCR法で定量化し、腎臓に付着するが上皮細胞の細胞死が起きるために長期定着できないのかを調べる。またトランスポゾン挿入された遺伝子の役割を解析する。 2.LP株が細胞死を抑制しているかを調べる:1)上皮細胞を感染させ、スタウロスポリン, MNNGやcisplatin等の細胞死誘導試薬を添加し、菌の感染が細胞死を阻害するかをTUNELやPI/Annexin V染色によって調べる。 LP株が細胞死を抑制しているのなら、試薬の添加によって細胞死が誘導されないまたは感染していない細胞と比較し遅れることと予想される。2) HP株とLP株でマウスを感染させ、菌が腎臓に定着する感染21日後に腎臓の上皮細胞の細胞死を誘導するcisplatinを投与し、菌の感染によって、cisplatinの腎毒性を抑制できるかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスポゾン挿入変異株のマウス感染実験を開始する予定だったが、遺伝子組換え実験の承認が年度内に得られなかったため、この実験を開始できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
トランスポゾン挿入変異株のマウスの感染実験を行うための動物購入および腎臓からDNAを抽出・精製するキット購入。
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