研究課題/領域番号 |
15K08468
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
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研究分担者 |
松崎 吾朗 琉球大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30229455)
福井 雅之 青森大学, 薬学部, 准教授 (60392502)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイコバクテリア / IL-17A / IL-17F / 肺 |
研究実績の概要 |
これまでの研究から、Mycobacterium bovis bacilli Calmette-Guerin (BCG)感染により誘導される分子(MCP-1、LFA-1、ICAM-1など)がIL-17A KOマウスで発現低下することを見出している。しかし、共有の受容体を用いるIL-17Fが同様な遺伝子産物の誘導制御をするかは不明である。そこでIL-17遺伝子欠損マウスを用いてマイコバクテリア感染におけるIL-17Fの感染防御能を検討した。 BCG感染肺におけるIL-17Fの発現動態を調べたところ、感染後IL-17Fの発現増強傾向が認められた。そこで、IL-17F産生細胞の同定を試みた結果、リンパ球からのIL-17F産生は観察できず、IL-17F産生細胞は非造血系細胞である可能性が考えられた。In vitro系の解析において、マウスII型肺胞上皮細胞株は非感染の状態でも高レベルにIL-17Fを発現し、かつBCG感染することにより有意に高いIL-17F発現が示された。In vitro系の解析ではIL-17FのBCG感染肺における局在を検討したところ、肉芽腫内部にはIL-17Fはほとんど認められず、肉芽腫の周囲に存在していた。さらに、II型肺胞上皮細胞特異的マーカーであるsurfactant protein-CとIL-17Fを多重染色したところ、両者が共局在することが確認できた。 以上のことから、マイコバクテリア感染早期では、肉芽腫近位のIL-17Fが肉芽腫成熟を誘導し、菌の封じ込めに働くが、肉芽腫構造がさらに拡張する感染後期では、IL-17F産生細胞が肉芽腫の中心から遠ざかるために、IL-17Fの影響が減弱になることが明らかになり、IL-17AとIL-17Fの機能分担がその局在性により規定される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、マイコバクテリア感染肺におけるIL-17サイトカイン・ファミリー、特にIL-17AおよびIL-17Fの感染制御機構を解明することを目的に、以下の研究計画を軸に研究を遂行する予定であった:1)結核菌感染肺におけるIL-17F産生細胞の同定およびその特性の解明、2)結核菌感染におけるIL-17Fを中心としたサイトカイン・ネットワークの構築、特に肉芽腫形成・維持およびTh1型免疫誘導メカニズムの解析、3)結核菌感染に対するIL-17F依存性防御機構の解析。計画1)ならびに2)は順調に進み、マイコバクテリア感染において、IL-17Aは主にTcRγδ+T細胞より、IL-17Fは肺胞上皮細胞から強く賛成されることを見出し、IL-17AとIL-17Fの機能分担がその局在性により規定される可能性を示唆した。しかし、IL-17産生細胞亜集団欠損・混合骨髄移植キメラマウスの作製を試み、この混合骨髄移植キメラマウスを用いた結核菌に対する免疫応答能を検証する段階になってIL-17遺伝子欠損マウスの交配が上手く行かなくなった。その為、当初計画していた研究の予定が遅延している。現在、飼育環境を改善し、実験に必要な遺伝子欠損マウスを揃えているところである。
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今後の研究の推進方策 |
まず遅延している結核菌感染肺における肉芽腫形成とTh1型免疫応答に関与するIL-17産生細胞の移入実験を試みる。本研究においてIL-17F産生細胞は非造血系細胞(肺胞上皮細胞)から産生されることを見出しているので、IL-17F遺伝子欠損マウスに正常(野生型)マウスの脾細胞、あるいはT細胞を養子移入し、その後結核菌を経気道感染させ、経時的に肺に形成される肉芽腫をイメージ解析する。さらに養子移入したマウスの肺浸潤T細胞の結核菌抗原特異的IFN-γ産生能を検討することにより、Th1型免疫応答誘導への影響を調べる。 今後は、結核菌感染における病態形成に関与するIL-17サイトカイン・ファミリーを中心とした抗結核免疫応答制御メカニズムを解明することにより、様々な側面からの遺伝子発現プロファイルを検討する。結核病態形成に関与する可能性が考えられる遺伝子について、結核菌抗原特異的T細胞を感染肺に誘導するワクチンを開発し、その感染防御誘導能について評価を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する遺伝子欠損マウスの交配が上手く行かず、予定した養子移入の実験ができなかった。次年度以降に、遅延した解析実験を行う。予算は動物飼育の維持管理のための技術補佐員の雇用ならびに移入実験に用いる試薬(蛍光標識抗体、培地等)に用いる予定である。
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