研究課題/領域番号 |
15K08469
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松澤 健志 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (80370154)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細菌感染学 / 細胞内寄生菌 / 自然免疫 / マクロファージ / インターフェロン / オートファジー / ゼノファジー |
研究実績の概要 |
オートファジーはリソソームを分解の場とする細胞内分解システムであり、細胞内タンパク質や小器官がそのターゲットとなる。細菌感染時にはオートファジーは細胞内に侵入した細菌を認識しリソソームまで輸送し、細菌を分解するため、感染症学・免疫学においても注目されているメカニズムである。飢餓などのストレスで誘導されるオートファジーや、誘導刺激が無い通常状態で起きる基底レベルのオートファジーは特異性を持たず細胞質成分を無差別に分解する。一方、損傷したミトコンドリアや細胞内に侵入した病原体を排除するために形成されるオートファゴソームは特異性を持った選択的なオートファジーであり、ミトコンドリアに対するものはマイトファジー、病原体に対するものはゼノファジーと呼ばれる。日本の研究者を中心としたこれまでの研究によりオートファジーの基本的な分子メカニズムや生理機能が明らかにされているが、選択的オートファジーにおける標的認識メカニズムには不明な点が多く残されている。 マクロファージに代表される食細胞は自然免疫の一端を担う細胞であり、外来の病原体を取りこみ、細胞内で殺菌・分解を行う。種々の細胞から分泌されるサイトカインのうち特にインターフェロンγが強力にマクロファージを活性化し、インターフェロンγ活性化マクロファージは捕食した病原体に対する殺菌作用や、腫瘍細胞に対する破壊作用が強化される。インターフェロンγによるマクロファージ活性化は自然免疫において重要なステップである。 これまでの研究により、当研究グループでは、インターフェロンγ刺激マクロファージ内で細菌に対する選択的オートファジー(ゼノファジー)が活性化する事を示唆する研究結果を得ている。そこで本研究ではインターフェロンγによるゼノファジー活性化の分子メカニズムの解明を目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究グループでは、これまでにインターフェロンγ刺激マクロファージで単にオートファジーが活性化するだけではなく、オートファジーの細菌に対する特異性が増強される事、この細胞内寄生菌に対する選択的オートファジー(ゼノファジー)がインターフェロンγの作用に関与する事を明らかにしている。そこで本研究では、インターフェロンγによるゼノファジーの活性化メカニズムの解明のため、以下の2点に注目して研究を進める。 1)インターフェロンγの下流でオートファジーの選択性・特異性を調節するシグナル伝達経路の解明 2)ユビキチンやオートファジー受容体のインターフェロンγ誘導性ゼノファジーへの関与の有無 これまでの研究により2番目の点についてはほぼ目標を達成したことから、区分を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究グループでは、これまでにマクロファージに細胞内寄生細菌の一種であるListeria monocytogenesを感染させると、未処理もしくはインターフェロンγ処理マクロファージいずれにおいても同程度のオートファジーの活性化を観察している。さらに、インターフェロンγ処理マクロファージでのみGFP-LC3の細菌感染部位への集積が顕著に上昇することも見いだしている。これらの結果から、インターフェロンγは単にオートファジーを活性化するだけではなく、細菌に対する選択的オートファジー(ゼノファジー)の機能も上昇させていると考えられる。今後は、遺伝子ノックダウン細胞や阻害剤を使用した実験を行い、インターフェロンγによるゼノファジー活性化に関与する因子を同定する事で、インターフェロンγの下流でオートファジーの選択性・特異性を調節するシグナル伝達経路を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者はこれまでに、インターフェロンγ刺激マクロファージで単にオートファジーが活性化するだけではなく、細菌に特異的な選択性を有するオートファジー(ゼノファジー)も活性化する事を明らかにしている。そこで本年度はユビキチンやオートファジー受容体のインターフェロンγ誘導性ゼノファジーへの関与の有無を明らかにすることを目的として研究を行った。しかし、当初の予定より研究が若干遅れたため、48,156円を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費は、次年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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