これまでに本研究ではSalmonella enterica serovar Typhimurium(S. Typhimrium)のIII型エフェクターSreA、SreBおよびSreCが金属プロテアーゼ活性を有すること、また、これらIII型エフェクターがNF-κB p65を特異的に消化し、p65の核移行を阻害することでNF-κB活性化を制御することを明らかにした。さらに、培養細胞を用いたin vitro感染モデルにより、S. Typhimriumの感染においてSreAおよびSreBがNF-κB活性化制御に関わることが示唆された。 平成29年度はサルモネラマウス感染モデルを利用したin vivo感染実験によりSreAおよびSreBがS. Typhimuriumの病原性発現に関与するか否かを明らかにすることを試みた。S. Typhimurium野生型またはsreAおよびsreBの二重欠失株をストレプトマイシンを前投与したC57BK6マウスに感染させ、1-3日後のマウス盲腸にみられる炎症を継時的に比較した。その結果、全ての時間において野生株とsreAsreB二重欠失株感染群に有意差は認められなかった。次に、野生株、sreAsreB二重欠失株またはsreA、sreBおよびsreCの三重欠失株をCBAマウス腸炎モデルに感染させ、4日後および7日後のマウス盲腸における炎症を比較した。しかしながら、両日ともにこれら菌株間でマウス盲腸炎誘導能に違いは認められなかった。以上のことから、S. TyphimuriumによるNF-κBに活性化制御が本菌の病原性に関与することをin vivo感染モデルで証明することはできなかった。
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