外来微生物の感染が成立し慢性持続感染する過程を追跡し、宿主の常在細菌叢に与える影響を調べた。Helicobacter pylori感染動物スナネズミモデルを使って16Sメタゲノム解析の手法により、胃および腸の細菌叢を解析した。 スナネズミへの感染力の高い、H. pyloriTK1402m3株を投与した動物は、感染2週後より胃内にH. pyloriが培養法で検出された。胃内細菌叢解析の結果は、H. pyloriが胃内細菌叢の40%以上を占有していた。胃内細菌叢のβ多様性解析の結果、非投与群と大きな変化が認められ、主座標分析で両群は異なるエリアにプロットされた。さらに長期感染後(40週)には感染菌数は同レベルで存在していたにも関わらず、胃内細菌叢占有率が8.5%に低下していた。同時期の多様性解析の結果、非感染群と近い位置にプロットされた。α多様性のうちシャノンインデックス(均等度)を解析し、感染初期(2週と8週後)には対照群と比べて均等度が低下していた。一方,空腸粘膜の菌叢解析の結果は、H. pyloriTK1402m3株感染初期(8W後)のβ多様性に大きな変化が認められ、他の時期は対照群と近かった。 感染性が低いK25株を感染させたスナネズミは、感染40週後に初めて培養法で菌が検出され、同時期の胃内細菌叢、空腸細菌叢ともにそれぞれの対照群と異なるβ多様性を示した。さらに、H. pyloriTK1402m3株感染群の結果とも異なっていた。 以上の結果から、H. pyloriが感染局所で増殖していく感染過程のなかで、胃のみならず空腸の細菌叢に強い影響をもたらし変化させるが、その影響の受け方は外来細菌の菌株の違いもしくは菌数の増殖時期により異なった変化となって現れることが明らかとなった。
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