研究課題
ボツリヌス毒素複合体は、神経細胞に対して毒性を示すボツリヌス神経毒素と4種のタンパク質から構成される無毒タンパク質複合体(NC)との複合体として存在する。これまでにNCは、毒性を示さないものとして考えられてきたが、我々は、近年、ボツリヌスD型菌が産生するNCがラット腸管株化細胞IEC-6に、空胞化を引き起こし、毒性を示すことを初めて明らかにした。本研究では、NCによる細胞毒性および細胞の形状に与える影響を明らかにすることを目的としている。本研究において、これまでに、ボツリヌスNCによる空胞形成には、後期エンドソームおよびリソソームが関与していること、さらに、培養細胞だけでなく、ラットの腸管に対しても毒性を示すことを明らかにしてきた。本年度は、NCの細胞毒性に関与する構成成分を明らかにするため、NCを形成するタンパク質をそれぞれ分離し、その細胞毒性を明らかにした。その結果、各構成成分単独には、細胞に対する毒性がないことが示された。また、構成成分のうちのいくつかが欠損している毒素中間体を用いた毒性試験においても、細胞毒性が著しく低下することが示され、完全な形の複合体を形成していることが細胞毒性において重要であるとを示した。さらに、本年度は、血清型のことなるボツリヌス毒素複合体、すなわちB型毒素複合体による細胞毒性ならびに空胞化活性を明らかにした。その結果、D型毒素複合体は、IEC-6並びに牛頸動脈正常細胞BAECに対し毒性を示し、さらに両細胞において空胞化の形成が認められた。一方、B型毒素複合体においては、両細胞に対し毒性が認められなかったが、BAECにおいて、空胞化が認められた、以上の結果から、ボツリヌス毒素複合体の細胞毒性並びに空胞化活性には、血清型による相違があることが示された。
すべて 2017
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