研究課題/領域番号 |
15K08476
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
塚本 健太郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (80434596)
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研究分担者 |
幸田 知子 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (80336809)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ボツリヌス毒素 / CRISPR/Cas9 / エンドサイトーシス |
研究実績の概要 |
ボツリヌスC型およびD型毒素は、他の毒素型と比べて受容体結合の特異性や宿主特異性が異なり、特有の作用機構を有していると考えられる。本研究の目的は、ボツリヌスC型毒素の細胞内侵入機構と細胞内局在性を明らかにすること、およびD型毒素の機能的受容体の解明である。本年度はC型毒素の細胞内侵入機構の解析を進めた。我々はこれまでに、多能性胚性癌細胞株P19を神経に分化させた細胞(P19神経)が、初代培養神経細胞と同程度の毒素感受性を有することを見出した。このP19神経を用いて新たな毒性発現関連因子を発見することが可能であると考え、まずはC型毒素受容体であるガングリオシドGD1a, GD1b, GT1bの合成酵素をCRISPR/Cas9ゲノム編集により欠損させた細胞(GM2/GD2S欠損細胞)を作製した。この細胞のC型毒素に対する感受性を調べた結果、GM2/GD2S欠損細胞は毒素に対する感受性が完全に消失し、細胞内に毒素が全く取り込まれないことが確認できた。このことから、P19神経とCRISPR/Cas9システムは今後毒素活性に関わる宿主因子を同定していく上で、有用な実験系になることが示された。次にC型毒素の細胞内侵入機構を明らかにするため、種々のエンドサイトーシス阻害剤の影響について調べた。その結果、クラスリン阻害剤、ダイナミン阻害剤、カベオラ阻害剤のいずれも毒素の取り込みおよび細胞内活性を阻害しなかったが、液胞型プロトンポンプ阻害剤であるバフィロマイシンA1処理では毒素の細胞内活性が阻害された。これらのことから、C型毒素は細胞内に侵入する際、クラスリンおよびカベオラ非依存的なエンドサイトーシス経路か、または複数の経路をとることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以前から進めていたCRISPR/Cas9によるP19細胞のゲノム編集を実験系として確立し、論文にまとめることができた。C型毒素の細胞侵入機構については、阻害剤を用いた解析により、エンドサイトーシス経路ではあるがクラスリンやカベオラ非依存的な経路であることを明らかにすることができた。現段階でのこれらの成果は、当初計画をおおむね達成しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
C型毒素の細胞内侵入機構について、さらに詳細な検討を進めていく。マクロピノサイトーシス経路や小胞リサイクリング経路が毒素の細胞内侵入に関与しているのかどうか解析する。また、C型毒素と種々のエンドソームマーカー、リソソームマーカーとの共局在を調べることで、毒素が細胞内に取り込まれた後、どのようなオルガネラに局在しているのか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は研究が比較的に順調に進んだため、当初計画より消耗品の購入が少なくて済み、物品費の使用額が当初計画より減少した。また、旅費についても研究分担者との打ち合わせ、試料の授受の回数が少なくて済んだこともあり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年度)は、ボツリヌスC型毒素の細胞内局在解析を主に進める。各種オルガネラマーカー等の抗体、蛍光試薬、イメージング用プレートなど消耗品の購入が多く必要となる。また、研究分担者との打ち合わせ、試料の授受も昨年度同様行い、C型毒素の研究成果を論文発表することを目指す。そのため、英文校閲費や論文投稿費も支出項目として必要である。
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