研究実績の概要 |
セリンスレオニンキナーゼ、あるいはチロシンキナーゼの基質ペプチドがスライドグラス上にスポットされたキナーゼ基質アレイを作成し、これらを用い志賀毒素(Stx)によって活性化される細胞内キナーゼ群に対するStx阻害ペプチドの効果を検討した。Stx1a単独あるいは、MMA-tet+FRA-tet(共にStx1a阻害ペプチド)+Stx1a存在下、ベロ細胞を37度30分培養後、細胞懸濁液とATP[γ-32P]をスライドグラスに添加しリン酸化された基質ペプチド群を解析した。その結果、Stx1a単独添加した場合には、少なくともp38、AKT等が活性化されること、Stx阻害ペプチドとStx1aを添加してもこれら活性化は影響を受けないことが示された。また複数種類のキナーゼについて、MMA-tetとFRA-tet投与によりStx1aによる活性化が抑制されていることが示され、現在詳細を解析中である。 Stx Bサブユニット1分子には3種類の受容体結合サイト(サイト1~3)が存在しており、MMA-tetはStx1Bサブユニットのサイト1を、FRA-tetはサイト2を各々標的としている。本研究ではFRA-tet以外にも、MMA-tetと組み合わせることで相乗的なStx1a毒性阻害効果を示すサイト2阻害ペプチドの探索を行い、新たに3種類( KGA-tet, YTA-tet, PQA-tet)を同定した。また、MMA-tetとFRA-tetが 同時にStx1aBサブユニットの各サイトに結合した場合、Stx1aによる p38, AKT, JNKの活性化は影響を受けない一方で、Erkの活性化のみが抑制されることが示されたが、この抑制作用はペプチドを単独投与した場合と比べて同程度であったことから、両ペプチド同時添加時に見られるStx1a細胞内輸送遅延はErkの活性化抑制だけでは不十分であると考えられる。
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