研究実績の概要 |
ウェルシュ菌(Clostridiumu perfringens)はヒトにヒトにガス壊疽と食中毒を引き起こす偏性嫌気性グラム陽性細菌である。ヒトのフィブロネクチン(Fn)は、この細菌に結合する。我々は、この細菌のペプチドグリカン層にFn結合タンパク質FbpCとFbpDが存在することを明らかにし、その機能について研究を続けてきた。最終年度は、まずウェルシュ菌菌体へのFn結合をELISA法を用いて定量する方法を用いてΔfbpC ΔfbpD株とpfbpC,fbpDを有する相補株を用いてFn結合を調べたところ、Fn結合量の減少は認められなかった。次にΔfbpC株とpfbpCを有する相補株、ΔfbpD株とpfbpDを有する相補株をすべて作製し、これらの菌体のFn結合量を調べた。さらに、これらの菌株の中で遺伝子を有する菌株においては、蛍光抗体法により菌体表層にFbpC, FbpDが表出していることは確認した。その結果、、FbpC, FbpDは、ウェルシュ菌のFn結合に主要な役割を果たしていないことが示された。一昨年、ウェルシュ菌の菌体表面にはGAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)がわずかながら存在し、ウェルシュ菌の菌体表層に存在する自己溶解酵素オートリシンと結合することが明らかになった。またGAPDHがFbp活性を有することが明らかになった。さらに最近、オートリシン自身にFn分子が結合することもわかった。そこで、エリスロマイシン耐性遺伝子ermBPをウェルシュ菌のオートリシン遺伝子(acp)上内に挿入し、変異体(acp::ermBP)を作製した。この変異株を用いて菌体へのFn結合の変化を調べたところ、2~3割Fn結合量が減少した。これにより、初めてウェルシュ菌体へのFn結合を担うタンパク質が明らかになった。
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