研究課題/領域番号 |
15K08482
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
玉井 栄治 松山大学, 薬学部, 准教授 (40333512)
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研究分担者 |
吉田 裕美 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10313305) [辞退]
成谷 宏文 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30452668)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 溶菌酵素 / ウエルシュ菌 |
研究実績の概要 |
溶菌酵素Psmは、ウエルシュ菌の細胞壁を特異的に分解し溶菌させる酵素である。本研究は、Psmや他の溶菌酵素の種特異性の分子メカニズムを明らかにするとともに、次世代の抗菌薬としての実用化を目指すものである。2016年度は、精製Psmを用いて凍結乾燥によりPsmパウダーを調整し、ヒプロメロースフタル酸エステルを用いてDipコーティングにより腸溶性Psmカプセルを作製した。作製した腸溶性Psmカプセルは、液中で約30分後に崩壊し、溶出したPsmは十分な溶菌活性を持っていた。腸溶性Psmカプセルをウエルシュ菌定着無菌マウスに投与した結果、1匹において、ウエルシュ菌の菌数が1/10に減少していることが確認された。また、コントロールカプセルでは、胃内もしくは十二指腸レベルで徐々に溶解している様子が確認されたことから、カプセルの性能が十分ではなく投与したPsmの一部のみが腸内で機能したと考えられる。 一方、他の溶菌酵素(AcpとCPR1483とCPE1138)に関しても解析を行った。Acpに関しては、そのカタリティックドメインが、3つのサブドメインからなる三日月型構造を取っていることを明らかにした。また、変異体による解析により活性中心を明らかにし、その反応メカニズムはNeighboring-group mechanismであると考えられた。また、細胞壁結合ドメインを持つAcp変異体では、C. perfringens St13とC. tetaniにのみ溶菌活性を示すことがわかった。CPR1483に関しては、この酵素の最適条件が100mM NaCl、pH7.5であること、C.perfringens、C.tetaniに対して溶菌活性を持つことが分かった。CPE1138に関しては、現在、精製条件の検討の検討が終わったところであり、今後、その生化学的性状を明らかにする。なお、CPR1483及びCPE1138に関しても、現在、結晶化のスクリーニングを行っているところであり、結晶化に成功するとその構造や反応機構が明らかになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Psmのin vivoでの効果の検討、AcpCDの変異体を用いた反応メカニズムの解析、他の溶菌酵素(グルコサミニダーゼとアミダーゼ)の発現系の構築や生化学的性状の解析及び結晶化スクリーニングを行った。これらは、一定の成果を上げており、学会発表4回、学術論文1報発表した。
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今後の研究の推進方策 |
Psmに関しては、結合基質と分解基質の同定をメインとして行う。具体的には、ウエルシュ菌から細胞壁画分を調整し、Psmや他の溶菌酵素(分解部位の異なるもの)で処理し、HPLCにより分解産物の分離を行う。その後、HPLCで分離した各フラクションをGST融合Psm細胞壁結合ドメインタンパク質(GST-PsmBD)もしくはGST融合Psmカタリティックドメイン(基質分解しない変異体)タンパク質(GST-PsmCD)を用いてドットブロットにより解析を行う。GST-PsmBDやGST-PsmCDが結合するフラクションをTOFMSにより解析する。また、Psmと結合基質の共結晶のスクリーニングを行う。一方、Psmのin vivoでの効果の解析に関しては、目的の部位にPsmが到達できるようにカプセルのコーティング基剤やコーティング方法の検討を行う。 他の溶菌酵素(Acp、CPE1138、CPR1483)に関しては、より詳細な生化学的性状の解析を行うとともに、結晶化スクリーニングを行いその構造を明らかにする。さらに、構造情報をもとに変異体を構築し、その反応メカニズムの解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
14円では、必要な物品が購入できないため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入に使用する。
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