本研究は、Psmや他の溶菌酵素の種特異性の分子メカニズムを明らかにするとともに、次世代の抗菌薬としての実用化を目指すものである。2017年度は、他の溶菌酵素(AcpとCPE1138)に関して詳細な解析を行った。Acpに関しては、細胞壁結合ドメインの構造を決定するため10個のSH3ドメインのうち1~8個持つ変異体を構築した。これらの変異体は、すべて細胞への結合活性を持っていたが、SH3ドメインが3個以下の物は結合が弱かった。また、これらの変異体を高度に精製し、結晶化を試みたが現在結晶は得られていない。一方、Acpのカタリティックドメインがフィブロネクチン結合タンパク質と結合することを明らかにした。CPE1138は、N末端にアミダーゼドメインをC末端に細胞壁結合ドメインを持つエンドライシンである。なお、アミダーゼドメインは、T7 Lysozyme Zinc Amidaseと相同性を示すが、細胞壁結合ドメインは相同性を示すタンパク質は見つかっておらず、新規のドメインであると考えられる。本研究では、CPE1138を様々に菌に作用させその種特異性を解析した。その結果、ウエルシュ菌に特異的に作用することを明らかにした。更に、N末端及びC末端から段階的に欠損させた欠損変異体を作成し、溶菌活性(ザイモグラフィー)や結合活性の必須の領域を解析した。その結果、溶菌活性には1~146番目のアミノ酸まで、細胞壁結合には165~304番目のアミノ酸までが必要であることを明らかにした。更に、これらの変異体を大量に高純度精製し結晶化を行った。その結果、N末端領域の結晶を得ることができたが、C末端領域の結晶はまだ得られていない。なお、N末端領域の結晶を用いてX線構造解析を行った所、2.0オングストロームの解像度のデータを得ることに成功し、現在、構造決定を行っている。
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