研究実績の概要 |
これまでの研究において、私達は、緑膿菌のオートトランスポーター分泌蛋白質の一つであるEprSが、プロテアーゼ活性化受容体を介して宿主の免疫応答を活性化するセリンプロテアーゼであることに加えて、緑膿菌の病原性に関与する様々な表現型に多面的な効果を発揮することを明らかにした。しかし、緑膿菌の病原性の全体像を理解するためには、生体内などの特定環境下の緑膿菌において発現される直接的ならびに間接的な病原性因子群を網羅的に解析することが必要と考えられた。そこで、平成29年度の研究では、そのような解析のための実験系の構築を行って、次の成果を得た。(1)緑膿菌の発育必須因子の遺伝子破壊株を取得し、この株が発育必須因子非存在下では発育しないことを確認した。(2)この株の発育を相補するために、緑膿菌のゲノムDNAをSau3AIで部分消化して生じた断片を広宿主域プラスミドに挿入したライブラリーは、何らかの目的クローンを99%の確立で含むために理論上で必要なクローン数(約58,000個)の約12倍である約700,000個の独立クローンからなっており、解析を行うために十分なクローン数であった。(3)大腸菌を用いて作製したライブラリーを接合によって発育必須因子の遺伝子を破壊した緑膿菌に導入し、約8,000,000個の緑膿菌株ライブラリーを取得した。今後、この緑膿菌株ライブラリーを、生体内に接種して一定期間後に回収された菌株が有するプラスミド上の挿入断片の塩基配列を解析することで、生体内の緑膿菌において発現される遺伝子群の解析を行う予定である。
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