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2015 年度 実施状況報告書

ISが関与する新たなO157志賀毒素産生機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K08484
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

楠本 正博  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域, 上級研究員 (40548210)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード腸管出血性大腸菌 / O157 / 志賀毒素 / IS
研究実績の概要

腸管出血性大腸菌(EHEC)O157のゲノムには数多くの挿入配列(IS)が存在しており、特に最もコピー数の多いIS629がゲノム構造の変化を引き起こし、O157ゲノムが多様性を獲得することが示されている。志賀毒素(Stx1およびStx2)は、国内で継続的に年間4,000名前後の感染者が出ているEHECの主要な病原因子の一つである。O157における志賀毒素の産生とISとの関連の解明に向けて、ゲノム配列が既知のO157 Sakai株にIS629転移酵素(TPase)を供給した場合に発現量が変動する遺伝子を、DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析により特定した。
その結果、O157へのIS629 TPaseの供給により198遺伝子の発現量が変動した(増加168遺伝子、減少30遺伝子)。発現量が増加した168遺伝子のうち83%(139遺伝子)がプロファージに関連する遺伝子であり、特にSp5(Stx2プロファージ)ではstx2遺伝子を含むほとんどの遺伝子の発現量が大きく上昇していた。一方、Sp15(Stx1プロファージ)に含まれる遺伝子の発現量も増加したが、stx1遺伝子の発現量はIS629 TPaseの供給により変動しなかった。
O157においてStx1とStx2の発現機構は異なり、Stx2の発現はファージの誘導に関連するが、Stx1は関連しないことが報告されている(Shimizu T. et al, Infect. Immun. 77:2813-2823)。したがって、O157においてIS629 TPaseはStx2ファージの誘導に関与することで、Stx2の発現を促進すると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ISは古くから知られる可動性遺伝因子であり、近年では細菌ゲノムの多様化との関連も示唆されているが、タンパク質(毒素など)の発現への関与は全く知られていない。そこで平成27年度は、O157における志賀毒素の産生とISとの関連の有無を調べるため、網羅的な遺伝子発現解析によりIS629 TPaseが発現に関与する遺伝子を探索した。その結果、IS629 TPaseがStx2プロファージ上の(stx2を含む)ほとんどの遺伝子の発現を上昇させ、Stx2の発現に関与することが明らかになったことで、今年度の目標はほぼ達成された。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り、平成28年度は次世代シークエンサーを用いたChIP-seq解析により、O157ゲノム上でIS629 TPase(ChIP-seq解析用にFLAGタグを付加)が結合する部位を特定し、IS629 TPaseの供給がStx2の発現またはStx2ファージの誘導を引き起こすメカニズムを解析する。また、平成29年度は、Stxの産生性やバリアント型などの異なる大腸菌株についてIS629 TPaseのStx産生への関与をO157 Sakai株と比較する予定であり、その際に使用する大腸菌株の選抜も平成28年度から開始する。

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公開日: 2017-01-06  

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