挿入配列(IS)は最も単純な可動性遺伝因子であり、腸管出血性大腸菌(EHEC)O157のゲノムには数多くのISが存在している。本研究では、O157ゲノムにおいて最も多いISであるIS629が、本菌の主要な病原因子である志賀毒素2型(Stx2)の産生にも関与することを明らかにした。O157においてStx2の産生はSOS応答およびそれに続くStx2ファージの誘導により促進されることが知られているが、IS629はSOS応答とは無関係にStx2およびStx2ファージを誘導した。本研究成果は、ISがその可動性によりゲノムを多様化するだけでなく、O157における毒素産生にも関与していることを示唆する。
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