研究課題
昨年度、髄膜炎菌の臨床分離株の中でヒト脳血管内皮細胞(HBMEC)への in vitro における感染能の高い株9株と低い株9株の外膜タンパクを抽出し、TMTラベリング法を用いた網羅的なタンパク発現量の比較を行ない、システイン輸送に関与するシステイン(Cys)結合蛋白Cbpが髄膜炎菌の病原性に関与する可能性を見出した。そこで、さらなる解析を行い以下のような結果を得た。その結果、(1)cbp欠損株において髄膜炎菌の細胞侵入能が野生株と比して約1/100まで減少する事が確認された。(2)cbp遺伝子を含むオペロン因子群(cts遺伝子群)の相補で抑圧された、(3)HBMECへの侵入能の低下と回復はCys取り込み活性と相関性が認められた、(4)cbp変異株においても野生株同様ezrinの集積は認められた、(5)cts 変異株はグルタチオン(GSH)合成酵素破壊株と同等のHBMEC内での生存率が低下していた、(6)GSHの合成量はGSH合成酵素破壊株と同じレベルまでは低下しておらず、野生株の約半分しか低下していなかった、(7)GSHはROS抵抗性を示す抗酸化作用を持つことが知られているが、in vitroにおいてはcbp変異株はROS抵抗性を優位に示した、(8)完全培地ではcbp 変異株は野生株と変わらない生育を示したが、Cysを欠如させた合成培地では野生株は50 μMのCysの添加で十分な生育が相補されたが、cbp 変異株は300μM以上のCysの添加が完全な生育欠損の抑圧に必要であった。以上の結果から、髄膜炎菌の髄膜炎菌のCTSを介したCysの取り込みはCys量が極めて少ないHBMEC内で、GSHの産生に利用する一方で、髄膜炎菌の宿主細胞内での維持・生育に必須であり、nutrient virulence factorとして機能することが示された。
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