研究課題/領域番号 |
15K08486
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
伊豫田 淳 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (70300928)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 腸管出血性大腸菌 / 接着因子 |
研究実績の概要 |
国内で分離される重症者(血便、HUS、脳症および死亡例)由来の腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)として主要なO群の多くは染色体上にLEEと呼ばれる病原性遺伝子群を保有する。これまでの研究から、重症例由来のLEE非保有型EHEC株のうち、既知の接着蛋白質(Intimin, Saa, Eib)を保有しない菌株を選択し、特定のO群に属する菌株についてトランスポゾン(Tn5)挿入変異株による接着能の低下あるいは接着能の上昇変異株を分離した。その結果、タイプI線毛遺伝子の複数の構成遺伝子にTn5がマッピングされることが判明した。これらの遺伝子の欠失株をλ Red recombinaseのシステムで分離したところ、タイプI線毛の機能欠損株では培養細胞への定着能が顕著に低下した一方、構成的に発現する変異株では定着能が上昇した。さらに、これらの表現型は各欠損変異株の野生型遺伝子を運ぶ低コピー(1-5コピー)プラスミドで相補されることを確認した。さらに、今年度のLEE非保有型EHEC臨床分離株の解析から、血尿患者由来株として同様な菌株が複数分離されていることが明らかとなった。 昨年度同定された、EHECと腸管凝集接着性大腸菌(enteroaggregative E. coli: EAggEC)とのハイブリッドタイプの塩基配列解析を行ったところ、プラスミド上にEAggECに特徴的なagg遺伝子群が存在することが明らかとなった。この分離株の培養細胞への接着性を解析したところ、EAggECに特徴的な接着形態を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重症例由来のLEE非保有型EHECについて、宿主細胞への接着に必要な遺伝子群を同定した。その他、血便患者由来株として分離したEHECとEAggECとのハイブリッド株のゲノム配列解析から、EAggECに特徴的なagg遺伝子群がプラスミド上にコードされていることを明らかにした。さらに、EAggECに特徴的な接着形態を示すことが判明したことから、新規ハイブリッド株であることが明らかとなっており、今後の研究の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
LEE非保有型EHEC株のうち、タイプI線毛が細胞接着に必須であると同定された菌株について、次世代シークエンサー(Illumina MiSeq)による全ゲノム配列解析を実施して詳細な系統解析を行うと共に、保有する病原性遺伝子レパートリー解析を実施する予定である。 EHECとEAggECのハイブリッド株についても全ゲノム配列解析を実施し、染色体上にコードされているstx2を運ぶファージの挿入部位等について解析を行うと共に、詳細な系統解析および保有する病原性遺伝子レパートリー解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンサー(Illumina MiSeq)を用いた解析を実施する予定であったが、当該年度内に実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シークエンサーを用いた解析を行うための費用とする予定である。
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