国内で分離される重症者由来の腸管出血性大腸菌(EHEC)のうち、主要な病原性遺伝子群である、locus of enterocyte effacement(LEE)を保有しないEHEC(LEE非保有型EHEC)の解析を進めたところ、既存のO血清群に型別出来ない新規型として暫定的に命名したOgXX型のEHECが重症例から複数(n>6)分離されていることが判明した。OgXX型EHECのH型(運動性マイナスの場合はHg型)を決定したところ、少なくとも4種類の異なるHg型に分類されることが明らかとなった。HUS由来株としては2株分離されており、これらが保有する病原性遺伝子を解析したところ、これまで同様、重症例由来のLEE非保有型EHECに頻繁に見出される接着遺伝子saaを保有し、志賀毒素2型とは異なるベロ細胞毒素である、Subをコードする遺伝子を保有する菌株であることが明らかとなった。HUS由来株以外のすべてのOgXX株は現時点で10株以上分離されており、いずれもLEE非保有型で上記のsaaおよびsub遺伝子を保有する菌株であることが明らかとなった。今後これらの菌株について、全ゲノム解析等でより詳細な病原性遺伝子の解析を進める予定である。昨年度までの研究から判明した腸管凝集接着性大腸菌とEHECとのハイブリッド株として、さらに1株がHUS患者から分離された。この菌株の血清型はOXXX:HXXであるが、このハイブリッド株が保有していたstx2遺伝子は分離途中で完全に欠損することが明らかとなった。同一HUS患者便から上記のハイブリッド株とは異なる血清型でstx2陽性のEHECも分離されたが、ハイブリッド株と比較して菌株の分離頻度は低く、患者血清中の凝集抗体価も低いことが判明した。
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