研究課題/領域番号 |
15K08487
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
川端 寛樹 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (60280765)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ボレリア / 新興回帰熱 / 自然免疫 / 血清耐性 |
研究実績の概要 |
Borrelia miyamotoiの血清非感受性は,血清中の補体による殺菌機構に対する抵抗性に起因すると考えられている。この補体抵抗性を規定する遺伝子群の同定とその機序を明らかとするために、3年計画の1年目である平成27年度には、これを明らかにするための基盤実験系の確立ならびに形質転換可能でかつヒト血清感受性株の樹立を行った。2年目である平成28年度には、計画1年目に樹立されたヒト血清感受性でかつ形質転換可能なB. garinii HT59株を用い、大腸菌-ボレリアshuttle vector pBSV2を用いてヒト血清非感受性のB. miyamotoi MYK3株由来遺伝子を導入したボレリア株の作成を行った。 1)HT59G株はプラスミドpBSV2による形質転換効率は19 transformants/ug DNAであった。これまでにB. gariniiの形質転換による外来遺伝子導入が海外で試みられているが、その形質転換効率は~1transformant/ug DNA (B. garinii G1株)であったことから、本研究で開発されたHT59G株は既存のG1株に対して380倍以上の形質転換効率を有することが明らかとなった。 2)本株を用いて、B. miyamotoiの病原性に関係すると考えられる表層抗原をコードする92遺伝子のうち、77%に相当する72遺伝子をB. garinii株へ形質導入し、血清感受性試験用スクリーニングパネルを完成させた。これら72遺伝子中6遺伝子が、予備的試験では、高~中程度の血清耐性をB.gariniiに付与することを見出している。今後これらの6遺伝子について、その機能解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にそって、概ね順調な進捗状況にある。平成28年度は「ヒト血清非感受性のBorrelia miyamotoi株から、表層抗原として推定された遺伝子群をヒト血清感受性のBorrelia garinii株へ導入したスクリーニングパネル作成」をマイルストーンに設定し研究を行った。 B. miyamotoi MYK3の外膜タンパク質をコードすると推定された92遺伝子を候補として選定した。これら遺伝子を各々In fusion法にてE.coli-Borrelia shuttle vectorへクローニングを試みた。これらのうち、84遺伝子が大腸菌を用いて単離され、うち72遺伝子についてB. garinii HT59G株への導入が完了した。また陽性対照としてヒト血清耐性を単独で付与するB. burgdorferi 由来cspZを、陰性対照としてオワンクラゲ由来gfp遺伝子を上述同様の方法でクローニングしB. garinii HT59G株へ導入した。これら遺伝子の強制発現のために用いたflagellum-associated 41kD antigen gene(flaB)プロモーターによりGFPの発現が確認出来ている。また、予備的試験では、B. miyamotoi由来6遺伝子が、各々高~中程度の血清耐性をB.gariniiに付与することを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
得られたBorrelia garinii形質転換株はヒト血清感受性試験を行う。ヒト血清感受性試験は40%ヒト血清,または非働化ヒト血清を用いて試験を行う。耐性を示した株については補体抵抗性を確認する為に,補体反応がBorrelia miyamotoi外膜上で,どこまで進行しているか確認する.推定されるBorrelia側の補体系抵抗機構として,1)C3 convertase活性を負に制御するH因子などと結合し、その下流の反応を抑制する,2)Vitronectinなどの生体分子による作用によりmembrane attack complexの形成阻害を行う,3)宿主CD59-like抗原を菌側が有することでMAC構造の稼働を抑制する,等が考えられる.このため、まずは、ボレリア菌体上で補体反応がどこまで進んでいるかを調べる.具体的には,補体反応に関わる成分に対する抗体を用いて補体因子の検出を蛍光顕微鏡下で行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成28年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画にそって実施予定である。
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