研究実績の概要 |
EBウイルス(Epstein-Barr virus)はガンマヘルペスウイルスに属し、普遍的に存在する病原性ウイルスである。唾液を介して感染し、初感染で伝染性単核症、のちにバーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、胃癌、上咽頭癌、慢性活動性EBV感染症、、T/NKリンパ腫などの原因となりうる。EBVは80を超える遺伝子をコードしており、これまでに同定されていない、あるいは機能が解明されていない遺伝子が数多く存在する。本研究では、このようなEBVの未同定、未解明遺伝子のうち、主にガンマヘルペスウイルスのみに保存されている遺伝子に着目し、これらの同定、機能解析をを行うことで、ウイルスの基礎的な性状解析を行うことを目的としている。このような研究は基礎ウイルス学に寄与するばかりでなく、新規創薬ターゲットやワクチンターゲットの開発にも貢献する。 本年度は特に、EBウイルスのBRRF1およびBKRF4とよばれる遺伝子について解析を行った。 BRRF1について欠損株を作製して様々な解析を行ったが、その表現型においては野生型と比べて大きな違いを見いだせなかった。すなわち、少なくともHEK293細胞においては、BRRF1遺伝子はEBウイルスの増殖に不要であることが分かった。しかし、過剰発現とレポーターアッセイにより、BRRF1がのシグナル伝達系や転写を調節する機能を有することが示唆された(Yoshida et al., Sci Rep 2017)。 BKRF4については、従来の大腸菌内遺伝子組換えの技術だけでなく、新規に開発したCRISPR/Cas9のシステムによってAkata株のウイルスを変異させることに成功し、BKRF4遺伝子の機能を明らかにした。BKRF4はウイルス遺伝子産生やウイルスゲノムDNA複製には関与していなかったが、ウイルス粒子の成熟、放出、およびウイルスが細胞に感染した時の感染性の向上に関与しているテグメントタンパク質であることを明らかにした(Masud et al., 2017 J Virol)。
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