研究課題
H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1ウイルス)が予想より遥かに少ない遺伝子変異の蓄積によって飛沫伝播能を獲得すると報告され、H5N1ウイルスのパンデミック化機序の解明は急務となっている。しかしながら、先行研究の多くが人工的な変異選択実験であるため、より詳細なH5N1パンデミック化機構の解明には、感染患者体内における実際のウイルス感染動態に基づく新しいアプローチが求められている。本申請課題では、エジプト研究機関との連携により集積化させた同国のH5N1感染患者由来ウイルス遺伝子情報に基づき、ヒト生体内で選択されたアミノ酸変異を網羅的に検索し、当該変異がウイルスのヒト感染性に与える影響を包括的に評価することで、H5N1ウイルスの新規パンデミック化機構の分子基盤を明らかにすることを目的としている。本年度は、マスデータ解析によって探索した感染患者体内で選択されたと推定されるHA領域における適応変異を導入した組換えウイルスを用いて、熱安定性試験および初代ヒト呼吸器細胞における増殖性をウイルス感染性力価にて測定する試験を追加的に実施した。さらに、マウス感染モデルを用いてin vivo病原性を解析した。その結果、変異ウイルスがヒト呼吸器上皮細胞およびマウスでの増殖性とマウス致死性を有意に高めることが明らかとなった。一方で、増殖性を高く変化させた変異ウイルス群は、HA構造安定性を低下させる傾向にあった。これらの知見は論文として取りまとめて、学術雑誌に投稿した。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/did/