研究課題/領域番号 |
15K08499
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
久保 嘉直 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30273527)
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研究分担者 |
安井 潔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50372777)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | HIV / interferon |
研究実績の概要 |
正常細胞とインターフェロンγ処理細胞のマイクロアレー解析により、インターフェロンγによって誘導される細胞因子を同定した。その中で10倍以上発現が上昇し、機能未知の細胞因子11種類を別々に強制発現する細胞を構築した。それらの細胞のHIVベクター感染感受性を測定した。その結果、IFI6、FAT10、IDO1が抗HIV活性を持っていることを突き止めた。HIVベクター・ゲノムの逆転写産物をPCRによって検出したところ、IFI6発現細胞では正常細胞と同様に検出されたが、FAT10もしくはIDO1を発現する細胞では検出されなかった。この結果は、FAT10とIDO1が、逆転写以前の段階で抑制していることを示している。次にHIVゲノムが核移行した後に形成される2LTR産物をPCRにより検出したところ、IFI6発現細胞では検出されなかった。これらの結果は、IFI6が核移行を抑制していることを示唆している。 FAT10はユビキチンと相同性があるので、細胞内に侵入してきたウイルス粒子の分解を促進することにより感染を阻害していると考えられる。IFI6は他に相同性のある細胞因子がなく、抑制機構を推測することが困難である。IDO1は必須アミノ酸であるトリプトファンを分解する酵素で、オートファジーを誘導することが報告されている。オートファジーはHIV感染を抑制することも既に知られている。IDO1発現細胞では、オートファジーのマーカーであるLC3-IIレベルが、正常細胞よりも高かった。オートファジーに必須な細胞因子であるAtg3をshRNAによりノックダウンした細胞では、IDO1はHIVベクター感染を抑制しなかった。これらの結果は、IDO1が、トリプトファン分解を介してオートファジーを誘導することにより、HIVベクター感染を抑制することを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、IFI6とFAT10がHIVベクター感染を抑制することしか見つかっていなかった。計画通り、これら2つがHIV複製段階の内のどの段階で抑制しているのか突き止めた。更に、多くの細胞因子のHIVベクター感染に及ぼす影響を解析した結果、新たにIDO1を同定した。加えて、IDO1によるHIVベクター感染抑制メカニズムを詳細に解明するに至り、当初予定していた計画以上の成果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今回、我々が発見したHIV感染を抑制する新規宿主防御因子は、強制発現させた場合、HIVベクター感染を抑制する。これらの細胞因子が、実際にインターフェロンγによるHIV感染抑制に必須であることを確認する必要がある。この問題を解決するため、これらの細胞因子と以前に我々が同定したインターフェロンγ誘導性防御因子GILT、合計4種類の細胞因子をshRNAによってノックダウした細胞を構築する。これらの中で、どの細胞因子が重要であるかを同定するため、様々な組み合わせでノックダウンした細胞を構築する。それらの細胞におけるインターフェロンγによるHIVベクター感染抑制効果を観察する。どの細胞因子をノックダウンした時、インターフェロンγの抗HIV活性が消失するのかを観察し、インターフェロンγの抗HIV活性に重要な細胞因子を同定する。
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