研究実績の概要 |
我々は以前に、インターフェロンγによって発現が増加する細胞因子の中でIFI6, FAT10, IDO1がHIV感染を抑制することを突き止めた。IDO1は必須アミノ酸であるトリプトファンを代謝する酵素である。過剰量のトリプトファンを添加したところIDO1によるHIV感染抑制が消失した。この結果は、IDO1がトリプトファンの枯渇を介してHIV感染を抑制することを示している。IDO1がトリプトファン代謝によりオートファジーを誘導すること、オートファジーがHIV感染を抑制することは既に報告されていた。そこで、オートファジー誘導に必須なAtg3をノックダウンした細胞を構築した。Atg3をノックダウンした細胞におけるIDO1によるHIV感染抑制効果は低下した。この結果は、IDO1がトリプトファン枯渇によりオートファジーを誘導し、そのオートファジーによりHIV感染が抑制されることを示している。 FAT10はユビキチンと類似しており、標的蛋白質と結合することによりプロテアソーム分解を誘導することが知られている。事実、プロテアソーム阻害剤はFAT10蛋白質レベルを著しく増加させた。ウイルス蛋白質とFAT10が結合するかどうか知るため、FAT10強制発現細胞にHIVを接種した後、プロテアソーム阻害剤処理し、抗HIV抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった。FAT10が結合し分子量が大きくなったHIV蛋白質は検出されなかった。この結果は、HIV感染に必須な細胞因子がFAT10により分解されることを示唆している。 IFI6と相同性のある蛋白質は見つかっておらず、その機能は不明である。また、FAT10同様、細胞に導入しても、その発現量は非常に低かった。しかし、プロテアソーム阻害剤やリソソーム阻害剤で処理しても発現レベルは変化しなかった。IFI6のHIV感染抑制機構は未だ不明である。
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