研究課題/領域番号 |
15K08503
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
百瀬 文隆 北里大学, 感染制御科学府, 講師 (90332204)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / RNA依存性RNAポリメラーゼ / ポリシストロニック発現 / 選択的分節集合 / モデルウイルスゲノム |
研究実績の概要 |
本研究課題では、[1]インフルエンザウイルスリボヌクレオプロテイン複合体(vRNP)の人工再構成系と試験管内vRNP共沈降実験系の構築による分節集合シグナルの同定(A型)を主課題とし、[2]モデルウイルスRNA (vRNA)の競合パッケージングによる、分節集合シグナルの検証(A型)および[3] B型ウイルス選択的分節集合様式の決定(B型)を副課題としている。 [1]について前年度構築したvRNP共沈降実験系の最適化に取り組んだが、2分節vRNP同士の相互作用は想定よりかなり弱く、アフィニティ担体を用いた標準的な手法では物理的な結合を安定検出できないと結論した。選択的分節集合が起きるためには輸送小胞の膜上すなわち平面上で側方拡散可能な状態にvRNPを配置する必要があるという作業仮説を補強する結果ではある。 [2]については、前年度作成した野生型・変異型の分節集合/パッケージング配列を有するモデルウイルスゲノムを用いて、競合パッケージング系の最適化を行っている。非競合条件の場合は変異型配列をもつモデルゲノムが出芽粒子に取り込まれにくいことを確認した。ただし、モデルゲノムの細胞内コピー数が多ければ、分節集合/パッケージング配列に依存せず偶然パッケージングされやすくなる傾向を見いだした。配列依存的なパッケージングが安定して検出できるよう最適化をすすめている。 [3]について前年度クローニングしたB型インフルエンザウイルス株ゲノムの微修正を行い、MDCK細胞で増殖可能な単一配列の組換えウイルス作成に成功した。プラーク単離した別の非組換えB型臨床分離株と共に分節近接頻度の測定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[1]について、人工vRNPを作成しアフィニティ担体を用いた共沈降実験を行ったが、安定な2分節複合体は得られなかった。アフィニティ担体を用いた共沈降系では原理的にbait分節の移動自由度が制限され、prey分節の自由度は上昇する。その結果、互いに正しい配向で接触する頻度が低くなり結合速度が低下したと推測している。選択的分節集合には輸送小胞の膜上すなわち平面上にvRNPを濃縮し側方拡散可能な状態で繋留する必要があり、この必要条件を細胞外で再現できなければ2分節の特異的な直接相互作用は検出できないと結論した。 [2]については、変異型配列をもつモデルゲノムが出芽粒子に取り込まれにくいことをRT-PCRで確認でき、概ね順調に進行中である。ただし変異型配列をもつモデルゲノムが出芽粒子に偶然取り込まれる割合が無視できず、配列依存的なパッケージングを感度良く検出するには実験条件の最適化が不十分であることが判明した。また現時点ではウイルス粒子の出芽頻度が低いため、再感染細胞で発現するレポータータンパク質の定量解析ができていない。 [3]については、塩基配列の微修正により組換えB型インフルエンザウイルスの作成に成功した。A型の解析で用いたプローブ設計方針および実験手法で、B型ゲノム分節間の近接シグナルを得ることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
[1]について、vRNP同士の物理的な結合を検証するためには検出系の大幅な変更が必要と判断し、[2]による間接的な証明に注力することにした。 [2]について、ベクターDNAの混合比率や総量などトランスフェクション条件の最適化を行い、放出ウイルス粒子数の改善と検出感度の向上をめざす。 [3]については、測定回数を増やし相関関係シミュレーションの精度向上を目指す。また、異なるB型株で同一の相関関係に帰着するか、A型とB型で8分節の集合様式にどのような違いがあるのかを明らかにする。
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