研究課題/領域番号 |
15K08506
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 順一 関西医科大学, 医学部, 教授 (40181341)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | HTLV-1 / ATL / ヒト化マウス / Tax |
研究実績の概要 |
HTLV-1感染ヒト化マウスに感染2週後から3週間、隔日でHSP90阻害剤を経口投与したところ、ATL様病態による白血病死が抑制されたことから、阻害剤の有無による感染細胞の腫瘍増殖性の違いが想定されたため、感染ヒト化マウスの脾臓よりヒトリンパ球を単離し、感染率及びHTLV-1tax遺伝子の発現を定量比較した。その結果、脾臓細胞の感染率に大きな差異は認められなかったものの、HSP90阻害剤投与マウスにおいては感染細胞あたりのtax mRNA発現量が有意に減少していた。また、個体内におけるHTLV-1の発現は抑制されていることから、ex vivo培養による発現活性化をみたところ、24時間の培養で、tax mRNA発現量は十~数十倍に活性化され、最終的に阻害剤投与の有無によらず同等のレベルに達した。この結果はHSP90阻害剤投与マウス個体内におけるtax 遺伝子発現の減少はプロウイルス挿入部位の差異やゲノムメチル化による発現抑制の結果ではないことを示唆している。一方、in vitroでの感染細胞株へのHSP90阻害剤の投与では、細胞内のTax蛋白の分解とともに細胞のアポトーシスが誘導されることから、HSP90阻害剤のHTLV-1感染ヒト化マウスへのin vivo投与により、増殖へのTax依存度が高いTax高発現感染細胞が優先的に殺傷されたと解釈された。従って、HTLV-1感染初期においては、細胞あたりのTax発現量が感染細胞の増殖性を規定している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、平成27年度は抗Taxペプチドワクチン投与によるHTLV-1慢性感染ヒト化マウス個体の樹立を試みる予定であったが、ワクチン非投与ヒト化マウスにアジュバントを単独で投与したことで、対象群において十分な感染を得ることが出来なかったため、HSP90阻害剤投与マウスを用いた実験に切り替えた。平成28年度は、アジュバント投与の適正化を検討するとともに、個体感染における自然免疫の影響にも焦点を当て、低感染あるいは持続感染ヒト化マウスにおける、感染細胞の解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
細胞あたりのTax発現量が感染細胞の増殖性を規定している可能性が示唆されたことから、今後、Taxペプチドワクチン投与あるいはHTLV-1感染細胞の経口投与によりHTLV-1慢性感染ヒト化マウスを作成し、感染細胞あたりのTax発現量およびHBZ等他のウイルス遺伝子の発現を急性感染ヒト化マウスと比較・解析し、この仮説の一般性を検証する。さらに、HTLV-1慢性感染ヒト化マウスおよび急性感染ヒト化マウスより感染リンパ球を分離し、それぞれの細胞遺伝子の発現を網羅的に解析することで、発症の転機となる形質とTaxをはじめとするウイルス遺伝子機能との関連を明らかにする。また、慢性感染ヒト化マウスおよび急性感染ヒト化マウスにおける各種末梢血サイトカインの発現を比較することで、それぞれの病態に特徴的なサイトカインの発現を特定し、感染個体への抗血清投与等の解析により感染抑制における宿主液性因子の関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
全額を使い切ることが難しかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に合算して、消耗品購入に充てる予定である。
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