研究課題
重症免疫不全マウスの造血系をヒト造血幹細胞で再構築したヒト化マウスにHTLV-1を感染させたところ、感染4週以内に末梢血感染細胞の急激な増加を伴い白血病死する個体群と感染4週以上生存する個体群に分かれたため、感染細胞あたりのウイルス遺伝子の発現を比較したところ、感染4週以内の感染細胞では、感染4週以降の細胞と比較して、HTLV-1の発がん遺伝子Taxの発現が高かった。そこで、Tax mRNAの発現にたいするプロウイルス挿入部位の影響を明らかにするため、感染マウス脾臓細胞より単離したゲノムDNAを鋳型にinverse-long PCRの手法で、プロウイルス挿入ゲノム断片をプラスミドDNAにサブクローニング後塩基配列を決定し、既知のヒトゲノム塩基配列との比較から、それぞれの挿入部位あるいは近傍に位置するヒト遺伝子を決定した。次に、それぞれのプロウイルス挿入部位の塩基配列を用いて、感染ヒト化マウスにおける各感染クローンの占有率を定量的PCRの手法で算出し、さらにNCBL Gene Bankの情報から得られた挿入部位遺伝子の脾臓における遺伝子発現量との相関を解析した。その結果、各感染ヒト化マウスにおいて高い占有率を示す感染クローンは、ほとんど全てが脾臓で発現する遺伝子のイントロン内に挿入されおり、ウイルス遺伝子が発現しやすいゲノム環境にある感染クローンが選択的に増殖している可能性が示唆された。また、感染4週以内の感染細胞では、感染クローンの占有率と挿入部位の遺伝子の発現量との間に正の相関傾向が見られたが、Tax発現が減少する感染4週以降のマウスにおいては、逆に負の相関が観察され、感染後期にはウイルスを発現しやすい細胞クローンが抗HTLV-1宿主免疫により排除されたと解釈された。
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PLOS Pathogens
巻: 13 ページ: -
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Biochem. Biophys. Acta
巻: 1876 ページ: 1813-1824
10.1016/j.bbagen.2017.03.018
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