研究実績の概要 |
ヒトB細胞に潜伏感染するEpstein-Barr virus (EBV) や Kaposi sarcoma-associated herpesvirus (KSHV, HHV-8) が上皮(EBV)や血管内皮(KSHV)にも感染する機構として、細胞間(cell to cell) 感染の分子メカニズムを解明することを目的とする。昨年度までにKSHVのviral interleukin 6 (vIL-6)の大量合成に成功し、このタンパクを用いて、マウスのモノクローナル抗体を複数作成した。そのうちの一クローンから得られたモノクローナル抗体はカポジ肉腫、primary effusion lymphomaなどのKSHV関連疾患の病理組織において、vIL-6を高感度に検出した。また、本抗体はKSHV感染細胞の溶解液を使ったウエスタンブロットでもvIL-6を認識可能であった。昨年の研究で、すでにvIL-6は形質芽細胞株の増殖には十分ではなく、他に増殖因子が必要であることがわかっているが、本モノクローナル抗体をEBV陽性形質芽細胞株PBL1やKSHV陽性primary effusion lymphoma細胞株TY1やBCBL1の培養上清に加えても、増殖に変化はなかった。さらに、このvIL-6マウスモノクローナル抗体の認識部位を明らかにする目的で、合成ペプチドを用いたエピトープマッピングを行ったところ、vIL-6とヒトIL-6の受容体であるp180の結合部位の近傍に認識エピトープがあることが判明した。今後、本抗体を用いて細胞間感染において、vIL-6が果たす役割について、解析していく。
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