研究課題
本研究では、ピコルナウイルス感染症のち、心筋炎や膵炎に着眼し、その劇症化と重症化に関わる宿主側、ウイルス側要因を明らかにする事を目的とする。当該年度は、様々な臨床症状を呈したコクサッキーウイルスB群2型感染患者由来株を複数株用いて、新生仔マウスの脳内あるいは腹腔内接種し各臓器に対する親和性と病原性を比較解析した。病理学的解析の結果、粘膜上皮、膵および心筋に特に強い親和性を発揮した株を選択することができた。上皮感染株と非感染株を選出し、これを 成マウスに経粘膜的に接種したところ、異なる病態と感染性を示す事が明らかとなった。臨床症状から特に膵に対して強い親和性と病原性を発症したことが推察された。今後、さらに詳細な病理学的・ウイルス学的解析を進める予定である。一方、サフォードウイルス3型の上気道炎患者由来株は、免疫不全マウスにおいて経鼻感染後にウイルス血症を発症し、膵、心に強い親和性を示した。その後、およそ2ヶ月経過してからウイルス感染による全身の骨格筋炎を発症した。今後、持続感染後のウイルスゲノムの変化と筋炎発症に関わる免疫反応について解析を行う。
2: おおむね順調に進展している
コクサッキーウイルスに関しては今年度の目標であった、研究対象ウイルス株の選択を行った。また、選択した株の病原性をおおむね把握することができた。サフォードウイルスに関してはおおむね計画通りに検索を進めたが、実験の一部を次年度に持ち越した。
コクサッキーウイルスに関しては、前年度の検討を引き続き行う。特に、経粘膜感染後のウイルスの体内動態と膵と心筋、骨格筋に対する病原性とそれに対する宿主側の反応、その後の持続感染性について詳細に解析を行う必要がある。サフォードウイルスに関しては、NOD/SCIDマウス持続感染モデルができたので、持続感染後のウイルスゲノムの変化と筋炎発症に関わる免疫担当細胞について解析を進める。
年度末納品等にかかる支払いが平成28年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定である。なお、平成27年度分の一部の予算について、一部の実験を次年度に持ち越したのでその分を次年度に実験動物等の消耗品費として使用する予定である。
上記のとおり。
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PLOS One
巻: 11 ページ: 1-29
10.1371/journal.pone.0148184.