研究課題/領域番号 |
15K08512
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
西村 順裕 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (00392316)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エンテロウイルス71 / 受容体 / PSGL-1 / 低分子化合物 / 阻害剤 / NF449 |
研究実績の概要 |
手足口病は四肢末端・口腔粘膜の水疱性発疹を主症状とし、幼児に流行する。主要な病原体はエンテロウイルス71型(EV71)などのピコルナウイルス科・エンテロウイルス属のウイルスである。手足口病は一般に症状が軽いが、EV71感染では髄膜炎・脳炎・脳症を起こし死に至ることがある。しかし、抗ウイルス薬は未だに開発されていない。低分子化合物NF449はEV71の表面に結合し、EV71の細胞への結合・侵入を阻害すると予想される。本年度はNF449エスケープミュータント(キャプシド蛋白質VP1の98番目あるいは244番目のアミノ酸に変異をもつ)や、受容体PSGL-1との結合を制御するアミノ酸であるVP1-145に変異をもつEV71を用いて実験を行った。NF449あるいはNF110によるウイルスとRD細胞との結合阻害、ウイルスと受容体との結合阻害を解析した。 野生型EV71とRD細胞の結合は低濃度のNF449で強力に阻害された。一方、VP1-98あるいはVP1-244のアミノ酸に変異をもつウイルスの場合、NF449による阻害効果が低下していた。VP1-98とVP1-244の両方のアミノ酸に変異をもつウイルスの場合、NF449による阻害は全く検出されなかった。 次に、VP1-145にグルタミン酸をもちPSGL-1に結合しないEV71を用いて実験を行った。このウイルスとRD細胞との結合は、PSGL-1に結合するEV71とRD細胞との結合と同様に、NF449で効率よく阻害された。 VP1-98, 145, 244はいずれもウイルスキャプシドの5回転軸近辺に位置することから、NF449がEV71の5回転軸近辺と相互作用すると考えられた。EV71のPSGL-1結合性にかかわらず、EV71とRD細胞のもつ受容体との相互作用においてはEV71の5回転軸近辺が重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた、「EV71変異体と受容体の結合」の阻害実験を完遂できたため。NF449はウイルスキャプシドの5回転軸近辺に相互作用すると考えられている。この領域には受容体PSGL-1も相互作用すると考えられている。キャプシドアミノ酸VP1-145はPSGL-1結合性を制御するが、NF449結合性には大きく関与しないものと考えられた。つまり、NF449はPSGL-1結合株、非結合株の両方に有効な感染阻害剤と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の通りに研究を進める予定である。ヒトPBMCにPSGL-1結合性EV71を反応させるとサイトカイン産生が誘導される場合がある。このサイトカイン誘導をNF449が阻害するかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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