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2016 年度 実施状況報告書

記憶T細胞応答を制御するエピジェネティック機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K08522
研究機関千葉大学

研究代表者

小野寺 淳  千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (10586598)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード免疫記憶 / 発生・分化 / エピジェネティクス / アレルギー・ぜんそく / 発現制御 / 抗原応答
研究実績の概要

交付申請書に記した研究目的に即し、私は免疫記憶に関する未解決問題の1つ、“なぜメモリー(記憶)T細胞はナイーブ(未感作)T細胞に比べて迅速に免疫応答できるのか”を解明すべく研究に取り組んでいる。本年度は、数年間にわたり研究を続けてきたエピジェネティック制御因子、ポリコーム群(PcG)およびトライソラックス群(TrxG)タンパク質について、権威のある総説誌に投稿することができた。またこれに関連する研究について、国内(1回)、国外(2回。うち1回は小規模のため本報告書には記載せず)の学会、シンポジウム等で発表した。こうした活動を通じて、国内外の様々な分野の研究者との議論を深め、国際的なネットワークを拡大することができた。
また、研究代表者が得意とするトランスクリプトーム解析手法を用いて、炎症を制御する分子CD69に関する研究に貢献し、共著者として論文発表を行った。この内容は、NHKのテレビニュースやインターネットのヤフーニュースでも紹介され、広く一般社会に興味を持たれる研究であった。今後も同様にアウトリーチ活動に取り組んでいきたいと考えている。また、このようなプログラミングを用いた解析法は多方面に応用可能であり、研究室内外で共同研究のニーズが高い。こういった共同研究の幅が広がったことも、本研究によって得られた成果の1つである。さらに、現時点では実績という形になっていないものの、投稿中あるいは投稿準備中の論文が多数あり、この1年間で飛躍的に研究が進んだと実感している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

交付申請書に記した研究計画に即して記載する。記憶T細胞のプロテオーム解析の一貫として予定していた、Bioplexを使用した分泌サイトカイン量の網羅的測定は終了した。その結果、トランスクリプトーム解析で観察された、記憶T細胞における種々のサイトカイン・ケモカインの発現上昇がタンパク質レベルで裏付けられた。
また我々は、上述した記憶T細胞のサイトカイン産生と、ミトコンドリア機能との関連性を調べることを計画していたが、これに関しても大きな進展があった。本学に新規導入された超高解像度顕微鏡(Structured Illumination Microscopy; SIM)のセットアップを完了し、T細胞のミトコンドリアの形態を視覚的に捉えることに成功した。そして、細胞内の抗酸化機構として重要なTxnip-Txn系を人工的に改変したマウス由来のT細胞では、ミトコンドリアの形態異常が生じることを発見した。またこの遺伝子改変マウス由来のT細胞のミトコンドリアの機能異常は、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイリングによっても確認された。
さらに、記憶T細胞の迅速応答を制御する新規中核因子の機能解析でも大きな進捗があった。候補分子としてリストアップしていたRBP(RNA結合タンパク質)が、記憶T細胞の増殖やサイトカイン産生に重要であることを見出し、現在論文投稿準備中の段階まで来ている。
以上のように、当初の計画以上に実験が進み、予想以上に興味深い結果が得られていることから、現時点での達成度は十分であると考えている。

今後の研究の推進方策

まず新規中核因子として先述したRBPについては、速やかにデータをまとめ論文投稿を予定している。遺伝子欠損マウスの作製も進めているが、siRNAを用いたノックダウンの実験系で十分な結果が得られており、現状データで論文にまとめたいと考えている。
また、計画書に記載したPcG/TrxG分子群による記憶T細胞応答性の制御機構の解析については、研究を進め論文として発表することを目標とする。このうち、TrxG分子のMeninと記憶Th2細胞に関する論文は現在投稿中である。査読者に指摘された点に関する追加実験はほぼ終了し、論文を修正した後速やかに再投稿することを予定している。TrxG分子に関するもう一つのプロジェクト、Cxxc1欠損マウスの解析もほぼ実験が終了し、論文投稿準備中である。PcG/TrxGのco-occupied遺伝子の空間的相互作用については、相関関数という新たな手法を導入することでより高度な解析を行えるようになった。これを用いて、公共データベース(GEO)を利用したH3K27me3とH3K4me3の空間的相互作用について現在解析を進めており、データが揃い次第論文としてまとめて投稿したい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Myosin light chain 9 and 12 are functional ligands for CD69 that regulate airway inflammation.2016

    • 著者名/発表者名
      Hayashizaki, K., Kimura, M. Y., Tokoyoda, K., Hosokawa, H., Shinoda, K., Hirahara, K., Ichikawa, T., Onodera, A., Hanazawa, A., Iwamura, C., Kakuta, J., Muramoto, K., Motohashi, S., Tumes, D. J., Iinuma, T., Yamamoto, H., Ikehara, Y., Okamoto, Y., and Nakayama, T.
    • 雑誌名

      Sci. Immunol.

      巻: 1 ページ: eaaf9154(1-10)

    • DOI

      10.1126/sciimmunol.aaf9154

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] A quantitative method for evaluating binding positions of Trithorax and Polycomb proteins based on correlation function or entropy.2016

    • 著者名/発表者名
      Onodera, A., Ogino, T., Kiuchi, M., Kokubo, K., and Nakayama, T.
    • 学会等名
      第45回日本免疫学会総会・学術集会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)
    • 年月日
      2016-12-07
  • [学会発表] Spatial interplay between Polycomb and Trithorax complexes controls transcriptional activity in T lymphocytes.2016

    • 著者名/発表者名
      Onodera, A., Tumes, D.J., Kiuchi, M., Kokubo, K., Watanabe, Y., Hirahara, K., Kaneda, A., Sugiyama, F., Suzuki, Y., and Nakayama, T.
    • 学会等名
      International Congress of Immunology 2016
    • 発表場所
      MELBOURNE, AUSTRALIA
    • 年月日
      2016-08-23
    • 国際学会
  • [備考] 千葉大学大学院医学研究院免疫発生学

    • URL

      http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/meneki/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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