研究課題
IL-31はアトピー性皮膚炎での主要な痒み惹起物質の一つであり、主に、炎症部位に浸潤したCD4陽性T細胞により産生される。申請者の所属研究室ではDOCKファミリー分子の一つであるDOCK8の欠損マウスをANDトランスジェニック(Tg)マウスと掛け合わせることで、このマウスがアトピー性皮膚炎様の病態を呈し、掻破行動(痒みに伴い、皮膚を掻く行動)が通常のマウスと比較して有意に上昇していることを見出した(Yamamura et al., Nat. Commun., 2017)。さらに、このマウスの血中には多量のIL-31が存在することが認められ、 IL-31による痒みの研究に有用であることが示唆された。IL-31による痒みは、皮膚などの末梢で産生されたIL-31を脊髄後根神経節(DRG)神経が感知することで惹起されると考えられる。即ち、IL-31を感知したDRG神経細胞が何らかのメディエーターを放出することで、痒みの情報が脳に伝えられると考えられるが、その詳細なメカニズムは明らかでない。申請者はこのメカニズムの一旦を明らかにすべく、アトピー性皮膚炎様病態を呈するAND Tg/DOCK8欠損マウスからDRGを単離し、マイクロアレイやReal-time PCRなどを使ったDRGでの遺伝子発現解析を行うことで、痒みのシグナルを脳に伝達すると考えられる分子の同定を試み、その候補として我々がCMILS(Candidate molecule for IL-31 sensing)と名付けた分子を同定するに至った。実際に、この分子の欠損マウスを作成し、IL-31誘導性の掻破行動を解析した結果、野生型マウスと比較して、有意に掻破行動が低下していた。今後は、作成したCMILS欠損マウスを用い、 IL-31による痒みの誘導メカニズムを明らかにする予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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