研究課題
これまでにCre/LoxPシステムを利用して細胞系譜特異的にカルシウムバイオセンサーYellow Cameleon (YC)3.60を発現するマウスを樹立し、マウス個体を用いた生体イメージングを行ってきた。CD19-Creマウス、CD4-Creマウス、Nestin-Creマウスと交配してB細胞、T細胞、神経細胞特異的にYC3.60を発現するマウスを作製した。B細胞特異的YC3.60発現マウスを用いて、YC3.60の発現をB細胞の分化段階で調べた。自己免疫疾患は発症しないが遺伝的素因を持つB細胞抗原受容体の抑制性経受容体CD22欠損マウス、あるいはアポトーシスにかかわるFasの変異マウスであるC57BL/6lprマウスにおいて、脾臓B細胞のカルシウムシグナルの亢進がみられた。またT細胞特異的にYC3.60を発現するC57BL/6lprマウスにおいても脾臓T細胞でのカルシウムシグナルの亢進がみられた。これらのことは、自己免疫疾患において自己抗体産生以前の超早期にB細胞のカルシウムシグナルに異常がみられることを示しており、カルシウムシグナルを指標とすれば、臨床的な病態の発症以前(未病の状態)に異常を検出できることを示唆している。腸管パイエル板においても生体イメージングシステムを構築しており、腹腔内に抗原投与ご時間程度で、樹状細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇が見られ、動きも活発になっていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
自己免疫疾患のマウスモデルにおいて、カルシウムシグナルが指標となることを見出すことができ、未病の検出のターゲットとなりうる可能性を示すことができた。また抗原の侵入による初期の免疫反応の様子を樹状細胞の可視化によって示すことができた。
自己免疫疾患モデルにおいて、カルシウムシグナルをモニターすることによって病態発症の超早期を検出することができることが分かったので、アレルギーや腸炎など他の疾患モデルにおいてもカルシウムシグナルが疾患の超早期の検出の標的となりうるか、検討する。また各種疾患モデルにおいてリンパ球のみならず、神経系へのカルシウムシグナルの影響についても評価する。
一部においてマウスの交配が進まず、実験が遅れた。
マウスを交配するスペースを増大させて、当初予定した実験を早急に行う。
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Sci Rep. 2016 Jan 6;6:18738.
巻: 6 ページ: 18738 (1-13)
10.1038/srep18738.