研究課題
これまでに生体イメージングに適したFRETを基盤とした細胞系譜特異的カルシウムバイオセンサーYC3.60発現マウスを用いて、5D生体イメージングを確立し、各種免疫組織の免疫細胞でで細胞の動態のみならず、カルシウムシグナリングも検出できることを示してきた。さらには自己免疫様モデルマウスで病態発症前に細胞内のカルシウムシグナリングに異常があり、超早期の未病を検出できることを示してきた。今年はさらに疾患と免疫細胞のカルシウムシグナリングの関連を調べるために、無菌マウスでは免疫が未熟でアレルギーになりやすいとされるので、無菌YC3.60発現マウスを作製し、生体イメージングで脾臓を観察したところ、恒常的に細胞内カルシウムが上昇した細胞が存在していることが認められ、炎症が蓄積していることが推測された。また、IgA欠損マウスを作製したところ、小腸で軽い炎症が見られ、子のマウスの小腸パイエル板を解析したところ、B細胞のカルシウムシグナリングが亢進していることが判明した。炎症性腸炎モデルであるDSS腸炎を誘導したYC3.60マウスではパイエル板B細胞のカルシウムシグナリングが著しく亢進していた。これらのことより、炎症性の腸炎でのB細胞の異常な活性化があることが強く示唆された。またアレルギーを発症しやすい高IgE産生のIgEノックインマウスでも、YC3.60発現マウスと交配し、脾臓の免疫細胞を調べたところ、無処理のアレルギーを発症しないマウスでも恒常的に活性化している細胞が増加していることが示唆された。これらのことより病態発症に先立って免疫細胞の異常な活性化があることが明らかになった。さらに腸管での食シグナルの可視化にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
複数の病態モデルで生体イメージングによるカルシウムシグナリングを観察し、病態に先立って異常があることをリアルタイムで明からにでき、マウスモデルではあるが病態の超初期の未病検出系となりうことが証明できた。また、腸管上皮での食シグナルの可視化のシステムが構築でき、プロバイオティクスや腸内細菌叢との関連についても今後解析できるめどが立ち、おおむね順調に研究が推移したと考える。
これまでに自己免疫疾患、炎症性腸炎などについて病態発症前から超初期にかけて、免疫細胞のカルシウムシグナリングに異常があることを突き止めてきたが、今年はアレルギー発症モデルやがんのモデル系で、免疫細胞の動態および活性化を生体イメージングにより解析し、経時的な病態の進行と免疫細胞の異常との関連を明にする予定である。また、無菌マウスを用いて、自然免疫系のリガンドが腸内にどのような作用をしているかを明らかにする予定である。細胞の移入実験と組み合わせ、特定の細胞種の機能について、細胞内シグナリングとの関連について調べ、その機能を明らかにする。
マウス施設の感染事故の影響で、実験が遅れ計画していた遺伝子組み換えマウスの作製ができなかったため。
既にベクターは構築したので、本年度の前半にはインジェクションを行い、遺伝子組み換えマウスを作製する予定である。
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Front Immunol.
巻: 7 ページ: (601) 1-8
10.3389/fimmu.2016.00601. eCollection 2016
http://www.tmd.ac.jp/mri/press/press34/index.html
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/17/01/27/02211/