研究課題
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、脂質代謝異常に伴って発症する脂肪肝に炎症や線維化を伴った病態であり、高率に肝硬変や肝癌に進行することが問題となっている。PDLIM2は、申請者らによって単離されたLIM蛋白ファミリーに属する核内ユビキチンリガーゼである。PDLIM2欠損マウスは、ハーバード大学の動物施設で飼育した場合には、全例NASH様の病変を発症するが、理化学研究所の動物施設で飼育した場合には全くNASHを発症しない。特定の腸内細菌が全身の炎症性疾患の病態の増悪に関与することから、無菌化した野生型およびPDLIM2欠損マウスに、タコニック社のマウスの糞便を投与してタコニック社のマウスの腸内細菌を定着させたところ、PDLIM2欠損マウスの雄では高カロリー食(9%脂肪含量)で飼育すると8ヶ月でNASH様病変を高率に発症した。一方PDLIM2欠損マウスの雌マウスは高カロリー食で飼育してもNASH様病変を発症しないが、高脂肪食(15%脂肪含量)で飼育すると6ヶ月で全例NASH様病変を発症した。さらに、腸内細菌のメタゲノム解析を行ったところ、理研の野生型マウス、タコニック社の腸内細菌をもつ野生型マウス、およびタコニック社のマウスの腸内細菌を有するPDLIM2欠損マウスは、それぞれ腸内細菌の構成が異なること明らかになった。また、このPDLIM2欠損マウスにおいては、ACC1やFASなどの肝臓の脂肪合成に関与する酵素、およびクッパー細胞のCCL2というケモカインの発現が野生型マウスと比べて亢進していた。以上より、PDLIM2欠損マウスでは、タコニック社のマウスの腸内細菌叢および高脂肪食により腸内細菌叢が変化し、これに伴って産生された腸内細菌の代謝物や菌体成分が門脈を経由で肝臓へと流入して肝臓の脂質代謝や炎症反応を亢進させることでNASH様病変が発症するのではないかと考えられた。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 46097
10.1038/srep46097