研究課題/領域番号 |
15K08538
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
浅井 篤 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80283612)
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研究分担者 |
三浦 靖彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40181854) [辞退]
尾藤 誠司 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 臨床疫学研究室, 室長 (60373437)
板井 孝一郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (70347053)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 倫理コンサルテーション / ネットワーク / 臨床倫理 / セカンド・オピニオン / 倫理的提案 / 社会事業 / 情報発信 / 臨床倫理サポート |
研究実績の概要 |
平成28年度は次の4点を達成できた。
1 病院倫理委員会コンサルタント連絡会議を設立し、前年度の2回に続いて第三回会議を開催した。「学ぶ」、「共有する」、「提供する」をテーマに、まず参加者がモデルケースのプレゼンテーションと海外視察のプレゼンテーションを行った。次に自由な意見交換の場を設け、自施設での悩みや懸念、現状の問題点、バリアを共有した。更に「今の日本の医療現場で、倫理コンサルテーションをテーマとして、どんな研究活動が必要か」を考え、可能であれば改善の糸口を見つけるフリートークセッション(本科研費研究のためのBrainstorming)を開催した。加えて、連絡会議ホームページ(HP)の構成や内容についての詳細な意見交換、セカンド・オピニオン型コンサルテーションの事例報告や、HPからの社会発信について話し合った。2 上記1の共有セッションで得た知見をまとめ、それらを主要テーマ・問いとして、平成29年3月25・26日の日本生命倫理学会臨床倫理部会との共催公開シンポジウム「今後の臨床倫理サポートについて」で、3時間の討論を行った。内容については全シンポジストおよび全参加者から事前に適切な同意を得てすべて録音した。この内容は最終年度の解析対象とする予定である。倫理コンサルタントの能力、態度、スキルを含むコンピテンシーリスト案の提示も行った。3 病院倫理委員会コンサルタント連絡会議ホームページは予定通り開設し維持された。4 セカンド・オピニオン型少人数倫理コンサルテーションを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に第三回会合で現状の課題を明らかできたためである。それらには「体制は出来たが事例が上がってこない。」「特定の診療科から出てこない。」「「ハードル」を高くすると相談が出てこない。」「倫理的活動が浸透していかない。」「倫理コンサルテーション活動実施や倫理コンサルテーションが発育する土壌がない。」「施設内に専門家がいない。」「医療専門職の認識が不明。」「何を推奨してよいかはっきりしない。」「「お墨付きがほしい」問題がある。」「弁護士からの指摘(訴訟回避、「医療と警察」)で思考停止してしまう。」「コンサルテーションの働きをどこまで広げるのか(市民、在宅)。」「その他の部門との役割分担不明・横断的繋がりがない。」「教育(勉強会)と実践の解離。」「周知不足。」「特定の個人が常に24時間の対応は無理」「大学病院(組織縦割り)という難しさ」「介入タイミングの遅さ・遅れ」等があった。
第二に、上記項目に加えて、今後検討されるべき未決問題(潜在的リサーチ・クエスチョン、コンサルタントの資質に関する問題も含む)を平成29年3月25・26日の日本生命倫理学会臨床倫理部会との共催公開シンポジウム「今後の臨床倫理サポートについて」で提示し、それらに対してシンポジストおよび参加者で十分意見交換できたためである。このシンポジウムでは倫理コンサルタントのコンピテンシーリストに関する報告も含まれた。この意見交換結果は録音さえており、これから逐語録を作成し、内容分析を行い、最終年度の報告の一部とする予定である。これにともなって、当初計画していたフォーカスグループインタビューによる情報収集は不要となり実施しないこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進の方策は5つである。
1 倫理コンサルタントの能力や態度にあたるコンピテンシーに関する報告をブラッシュアップし最終版を作成する。2 セカンド・オピニオン型コンサルテーション活動を継続する。現時点で依頼がまだないため、より一層の周知活動を行う。3 平成29年3月25・26日の日本生命倫理学会臨床倫理部会との共催公開シンポジウム「今後の臨床倫理サポートについて」で録音された意見交換結果から逐語録を作成し、内容分析を行い、本邦の倫理コンサルテーションのこれからのあり方の知見を整理する。4 第4回、5回の病院倫理委員会コンサルタント連絡会議会合を開催し、今までの知見をフィードバックすると共に、さらなる意見交換・収集を行う。 5 臨床倫理関連の基本的で典型的な諸事例に対するモデルコンサルテーション回答の作成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年二回実施を予定していた病院倫理委員会コンサルタント連絡会議の会合が研究者および参加者の日程の関係で、1回しか開催できなかったため、そのための会場費や関係者旅費などの費用が不要となった。また日本生命倫理学会等と共催した臨床倫理コンサルテーションに関するシンポジウムを開催し、3時間のシンポジウムでのシンポジスト発言と会場からの発言を、本研究の研究テーマを追求するために使用できることとなったため、新たにフォーカスグループインタビュー実施の必要性がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度には可能な限り全国の病院倫理コンサルタントを集めた連絡会議を開催する。シンポジウムの発言録を内容分析し、その内容をまとめる。臨床倫理領域の典型的基本ケースの作成とコンサルテーション回答案を作成するための資料を収集し、事例集を作成し、一定数の冊子体を制作すると共に、ホームページに掲載する。そのために残額を使用する。
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