研究実績の概要 |
平成28年度に実施した全国地域枠6年生調査について、解析、発表を行った。39大学の地域枠医学生を対象に,奨学金返還の可能性とその関連要因を明らかにするため自記式質問紙を用いて調査した.奨学金返還の可能性を「とてもある」または「少しある」と回答したのは112名(37.8%)だった.返還可能性との関連要因は,女性(オッズ比3.2, 95%信頼区間1.5-6.8),地域枠選択理由が「医学部に入学しやすいから」(同2.9, 1.2-6.8),私立大学(同10.3, 2.-40.3),就労義務によるストレスが多い(同2.4, 1.3-4.3)だった.地域枠学生の選抜方法の工夫や,ストレスを感じる学生に配慮した制度調整が,奨学金返還を抑制するうえで重要と考えられた.これらを第49回医学教育学会大会(札幌)にて発表、同学会誌「医学教育」に投稿し掲載された。 また、平成29年度から実施している地域枠5,6年生を対象にした、卒業後の限られた地域、診療科などにおける就労義務をかかえた地域枠学生が、それをどのように受け止めているのか、不安やストレスにどのように対応しているのかを明らかにすることを目的としたインタビュー調査を継続し、平成30年度は3大学の学生にインタビューを行った。平成29年度実施のインタビューテクストとあわせて粗解析が終了し、現時点で就労の場所が出身地に近く将来もそこで暮らし、働くイメージをもてている学生はそれほどストレスを感じておらず、医師として地域に貢献していきたい意思が明らかになった。奨学金に対する認識は様々で、貯めていて手をつけていない学生から奨学金のおかげで生活できている学生など様々であった。一方で途中卒業後の就労義務の制度がかわっても都道府県の担当者がその条件について十分に把握しておらず、不安を感じていた者もいた。
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