研究課題/領域番号 |
15K08545
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
松本 和彦 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (40165882)
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研究分担者 |
奥山 隆平 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (80292332)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 研究者教育 / 臨床研究 / 治験 |
研究実績の概要 |
平成27年度に「GCPトレーニング教材」、「研修医向けGCP教材」を作成した。平成28年度は国立大学病院臨床研究推進会議加盟施設を対象に、臨床研究を実施する研究者への教育に関するアンケートを実施した。その結果、臨床研究の実施にあたり、93%の国立大学病院が介入研究、観察研究のいずれも、その実施に際し研究者の研修を義務づけているが、研修内容や方法は多様であった。また、外部機関で教育・研修をうけた研究者が、自施設で義務付けている研修を受講していない場合には自施設の講習を再度受講する施設が52%、また国立大学病院臨床研究推進会議などの機関が各施設の研究者教育に対し認証を与えることで教育の質の確保をすることに63%の施設が賛成した。研修体制が未整備な施設においては研修の充実を図ることは喫緊の課題と考えられる。 東京大学・大学病院臨床試験アライアンスでは、研究者教育教材CREDITSを作成している。この教材は国立大学病院臨床研究推進会議で提案され、国立大学病院長会議で示された「介入試験を実施する研究責任者の学習目標・シラバス」に準拠しており、本邦の多くの研究者が受講できるようe-learning教材となっている。すでに東京大学では臨床研究実施の際の研究責任者・分担者の必須の研修となっている。 一方、本邦ではCITI Japanのe-learning教材が研究者の行動規範・倫理教育の講習として多くの施設で採用されている。CREDITSは12章から構成され、第1章から第3章までの倫理教育はCITI Japanと共通しており、すでにCITI Japanを取り入れている施設でCREDITS教材も併用すると倫理教育の部分が重複する。このような重複を防ぐため、本事業でCERDITSの第4章から第12章をまとめたダイジェスト版の作成に取り掛かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に「GCPトレーニング教材」、「研修医向けGCP教材」を作成した。平成28年度は国立大学病院臨床研究推進会議加盟42大学45施設を対象に臨床研究者の教育に関するアンケートを実施し、臨床研究者教育の現状を調査した。国立大学病院臨床研究推進会議などの機関が各施設の研究者教育に対し認証を与えることで各施設の教育の質の確保をすることに対し63%の施設が賛成しているという結果がでた。このような認証制度を実施するための基本となる教育のシラバス、学習目標としては、国立大学病院臨床研究推進会議で提案され、国立大学病院長会議で示された「介入試験を実施する研究責任者の学習目標・シラバス」がある。東京大学・大学病院臨床試験アライアンスでは現在、このシラバスに準拠した研究者教育教材CREDITSを作成している。CREDITSを本邦の研究者の教育として広めることで各施設の研修体制の向上が図れる。CITI Japanを既に倫理教育として実施している施設では、CREDITSのダイジェスト版(CREDITSの倫理教育以外を概説)を使用することで、重複なくシラバスに沿った受講が可能となる。そのために今回はCREDITSダイジェスト版を作成する。CREDITSダイジェスト版は平成28年度末にはほぼ完成した状態である。 CREDITSは大手バイオ医療企業から構成されるTransCelerateのGCP教材(治験実施者対象)を目指している。CREDITSダイジェスト版の作成は、当初の計画であった治験実施者に対する効率的な教育プログラムの構築にあたり、おおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はCREDITSのダイジェスト版をブラッシュアップし、製本化する予定である。製本化したダイジェスト版を本院の各診療科に配布し、研究者が必要時に気軽に目を通すことができるようにしたいと考えている。また、本院で臨床研究・治験を実施する場合にはCITI Japanの受講が必須となっているが、これにCREDITSのダイジェスト版(e-learning)を加えることで、国立大学病院長会議で提示された「介入試験を実施する研究責任者の学習目標・シラバス」に沿った教育が担保できる。我々は、本院におけるこのような教育体制を構築することを提言している。 臨床研究を実施する際の必須の研究者教育の教材として当院のようにCITI Japanを使用している施設が多い。CITI JapanとCREDITSのダイジェスト版の併用(e-learning)という体制は「シラバス」を重複なく一通り学習でき、CREDITSダイジェスト版の需要は多いと見込まれる。そのため、製本化したCREDITSダイジェスト版を他施設にも配布し、広報活動の一環とする予定である。今後、CREDITSは大手のバイオ医薬企業から構成されるTransCelerateのGCPトレーニング教材として認定されることを目指しており、認定された場合にはCREDITSを受講していれば治験ごとに実施されている「GCPトレーニング」の教育の受講が要らなくなる。CREDITSは臨床研究のみならず世界的な治験実施のライセンス取得にも有用となる可能性をもった教材である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はアンケート調査およびCREDITSダイジェスト版の作成に重点をおいたので事務用品、旅費以外の費用はほとんどかからなかった。最終年度にCREDITSのダイジェスト版を製本化し院内あるいは外部施設に配布する予定であり、その費用を残すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度(最終年度)CREDITSダイジェスト版を製本化し、院内及び国内の他施設に配布する予定。CREDITSダイジェスト版のe-learningをCITI Japanのe-learningとともに使用することで国立大学病院長会議で提示された「介入試験を実施する研究責任者の学習目標・シラバス」に沿った教育が担保できる。次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて、製本代の費用あるいは送付代として使用する。
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