本研究の前段階では、プライマリ・ケアの質評価尺度JPCAT(Japanese version of Primary Care Assessment Tool)を開発した。これは、医療の質を「患者経験(Patient Experience)」を用いて評価するもので、医療者が自施設の質評価と改善を行うことが可能な状態となっている。その後、JPCATと乳癌検診受診との関連や、その下位概念である「包括性」とヘルスリテラシーとの関連が示唆された。 本研究では、診療所における質向上プログラム開発に向け、まず、米国の「患者中心のメディカルホーム(Patient-centered medical home:PCMH)」に関する調査を実施し、Practice facilitationに関して整理を行った。また、質向上(Quality Improvement:QI)に関する教育のあり方を調査した。米国ではPCMHが全国的に推進され、認証のために診療データに基づく質の測定、患者経験評価、Population healthへの取り組みが必須となっていた。Practice facilitationやコーチの導入、診療所間のネットワーク、連携によりこれらの取り組みが推進されていた。 これらに基づき、日本の診療所で実践可能な質評価・向上プログラムの計画を立案した。3カ所の診療所職員(医師・看護師・事務職員等)を対象に、QIと患者安全に関する講義とワークショップを開催した。基本知識としてヒューマンエラーの種類と予防策、根本原因分析、PDSA(Plan-Do-Study-Act)サイクルを用いたQIプロジェクトの実施法を解説した。各診療所における目標・評価について議論し、患者誤認の予防、待ち時間の短縮などがテーマに挙がった。続いて、診療録データに用いた質の評価法について検討を行った。
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