研究課題/領域番号 |
15K08548
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
高橋 健太郎 滋賀医科大学, 医学部, 特任教授 (20163256)
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研究分担者 |
越田 繁樹 滋賀医科大学, 医学部, 特任講師 (70372547)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療社会学 / 地域周産期医療学 |
研究実績の概要 |
平成19年5月に第1回の周産期死亡症例検討会を開催し、これまで34回同検討会を開催し、平成19年から平成26年までの8年間の死産および新生児死亡症例の検討を終えた。同期間における人口動態統計上の死産及び新生児死亡はそれぞれ379例、147例であり、これまで周産期死亡症例検討会にて検討した症例は死産317例(84%)、新生児死亡146例(99%)で、ほぼ滋賀県全体の統計解析がもれなく行われていると解釈できる。解析した症例のうち回避可能と判断された症例は死産、新生児死亡それぞれ24例(7.5%)、2例(1.4%)であった。後期死産の回避に関する提言として、産科の妊娠・母体管理能力不足が少なからずあるとともに、妊娠知識の妊婦や社会への一層の啓発が必要であることが判明した。また、新生児死亡症例の検討から死亡回避には出生後の新生児集中管理の問題よりもむしろ妊娠中からの産科の母体管理の改善の必要性が大いに関連していることも判明した。これらの提言を県内周産期関連施設へ還元するのみならず、妊婦および社会への啓発を行っているところであり、平成19年から平成23年までの5年間と平成24年から平成26年までの3年間を比較すると死産数は50件/年から43件/年に、新生児死亡数は20.6件/年から14.7件/年へ減少しており、研究の成果が現れつつある。また、平成23年から平成26年の4年間に限り死産率を見てみると極端に死産率が高い施設(35.1/1,000出生)が判明した。総合周産期母子医療センターはハイリスク分娩を取り扱うので必然的に死産率は高い(8.5/1,000出生)ことがいえるが、この施設は助産院であり、助産院での妊娠、分娩管理および異常発見時の搬送システムおよび応援システム等の医療機関との連携システムの問題が浮き彫りとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には5回の新生児死亡および後期死産症例の検討会を開催し、平成26年度までの症例の検討が終了した。平成23年までの先行研究での5年間に3年分追加し、周産期死亡回避の可能性を判定し死亡回避のための提言を滋賀県主体の平成28年度周産期医療検討部会で行った。また、各種国内外の学会等で報告するとともに、地域の産婦人科医の会合さらには地域の母子保健従事者連絡会議に出席し、積極的に滋賀県の周産期医療の現状とその改善方法について、啓発活動を行い周産期医療環境の改善に寄与した。特に平成28年度は仏語圏アフリカ地域の行政官対象としての妊産婦の健康改善を目的としたJICA研修を2回行い、アフリカ地域における妊産婦管理に研究成果を還元できた。さらに、妊産婦ヘルスケア対策の一環として滋賀県においては日本初の母子手帳の中に妊娠リスクスコアーの項目と大津市では産後うつ病の予防の質問表の追加がなされ、母子の健康管理に大いに役立っており、そのデータを解析することが出来、今後のうつ対策に役立てる予定である。 また、周産期死亡症例検討会に県・市町の周産期担当者の陪席を積極的にお願いした結果、滋賀県における周産期医療の実情と緊迫感が直接行政に伝わったものと思われる。滋賀県における周産期医療従事者(医師、助産師、看護師をはじめとするパラメディカル)の新生児蘇生技術向上を目的として、新生児蘇生法普及(NCPR)事業による学会認定の新生児蘇生法「専門」コース(Aコース)講習会を積極的に開催および支援した。さらには心臓病胎児診断症例報告会in 滋賀も開催した。このような実習を取り入れた講習は、講習修了者の技能のレベルアップにつながり、少なからず滋賀県における新生児医療の改善および新生児死亡の減少をもたらしているものと思われる。 このように、ほぼ研究計画通りに順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、滋賀県内で発生した新生児死亡および後期死産症例の調査結果を詳細に後方視的に共通の視点で検証できる事例検証委員会で分析し、新生児死亡および後期死産症例の回避の可能性を検討する。 平成26年における県内死産症例38件のうち、胎動減少・消失を自覚した死産例は14件(37%)あり、その中で24時間以内に医療機関を受診したのは4件(29%)と少なかった。未だ胎動カウントチャートの収集段階であり、解析結果を待たなくてはいけないが、妊婦への胎動カウントの普及を行うことは胎動減少を自覚後に速やかに受診を行えば、死産を回避できる症例がかなり存在している可能性があるのみならず、胎動自覚から胎児の自覚、母親としての胎児への意識の集中、ひいては母性の獲得の推進に寄与することが考えられる。 また、死産や新生児原因が不明である症例に対してAutopsy Imagingを用いて原因分析することは死亡回避の有効な対策を講じることにつながる。幸い医療事故調査制度でのAIシステムが構築されたので、これらを積極的に利用し、症例を集め検討する予定である。 これまでの検討で周産期医療において、不幸な事例を未然に防止するための対策の大きな柱は住民に対する「お産の安全神話の是正」を含めた、妊娠・分娩・子育てに対する正しい知識の啓発である。短期的には現時点で子供を産み育てる年代の啓発運動であるが、長期的な観点からは、思春期を対象とした、命の大切さ、望まない妊娠予防、性感染症の予防、がん教育等が必要である。そこで、積極的に学校に出向き、出前授業を行うとともに学校保健委員会の中で養護教員や学校保健委員へ「命の大切さの講義」を行うことが将来を担う滋賀県民への妊娠・分娩に対する正しい知識の啓発活動の一手段と思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は順調に「後期死産および新生児死亡症例検討会」が開催できたが現在ある物品をより効率的に使用し、平成29年度の計画が順調に行えるように今年度の残額を若干残した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は平成28年度研究計画分も実施予定であるので、当初の計画通り、平成29年度の計画に基づき、効率的に使用する。したがって、平成29年度の研究費使用は平成28年度分と平成29年度分の予定である。
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