研究課題/領域番号 |
15K08552
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
惠木 浩之 広島大学, 病院(医), 講師 (20403537)
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研究分担者 |
栗田 雄一 広島大学, 工学研究院, 准教授 (80403591)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腹腔鏡下手術 / 内視鏡外科手術 / ロボット手術 |
研究実績の概要 |
腹腔鏡下手術は低侵襲性・拡大視効果による繊細な手術ということが大きな利点である。一方、大きな欠点として挙げられるのが、視野外の操作確認ができない(死角の存在)と触覚の低下である。このような欠点は、患者さんに直接影響を及ぼす合併症を生じる可能性があり、是非とも解決したい課題である。この欠点を補い安全な腹腔鏡下手術を確立するために、死角の存在を解消できるシステムの開発に取り組んでいる。 我々は、全天球カメラ(360度の画像情報)を利用して、腹腔内に潜り込んだ状態(没入型)の視野を確保できることに成功した。以前は画像情報が得られるため数分のタイムラグがあったが、リアルタイムの情報を取得できるように改善された。またこの画像情報をコンピュータで処理しヘッドマウントディスプレイにリンクさせることで、術者の動きに合わせて好きな部分を好きな時にリアルタイムで確認することができるよう設定することに成功した。 この全天球カメラから得られる情報が腹腔鏡下手術の安全性を向上させる可能性があるかどうか検証するための実験を行った。対象はエキスパート外科医師からノービス外科医師と外科医師としての経験に幅を持たせた。ドライボックスを用いてアトランダムに番号札を配置し、この番号札を、通常の内視鏡スコープを用いた場合と全天球カメラを用いた場合で確認するタスクを課した。確認のスピードと正確性を検証した。 結果は、全天球カメラを用いた場合が有意に確認までのスピードが速く・正確であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は自ら開発した超小型広視野角カメラを複数台設置して3D構築した画像を用いることを目指していたが、3D構築に向けた技術は非常に難易度が高く3年間という短い期間では達成できなかった。しかしながらSHARPとの共同研究で進めてきた上記超小型広視野角カメラがようやく完成し、現在phase I の臨床試験を本年3月から開始している。目標登録症例数10例中8例登録し5月中には終了する見込みで、今年度中には発売予定である。しかしながら、全天球カメラを使用することで目指しているコンセプトに関してブレはなく、この条件下で研究を継続したい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年は、このカメラの小型化・内視鏡スコープ先端への装着を企業に提案しながら、実用化に向けた活動をしていきたい。可能であればブタ等の大動物あるいはラットを用いてこのコンセプトの再現を行い、安全性の確認目的に血液生化学的検査・サイトカイン等のバイオマーカーを検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
この全天球カメラから得られる情報が腹腔鏡下手術の安全性を向上させる可能性があることをドライボックスを用いた実験で確認することができた。実臨床化を視野に入れた場合の安全性の評価(動物実験や基礎的データ取得、画像処理等)に費用が必要と考え、次年度に繰り越しました。
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次年度使用額の使用計画 |
実臨床へ応用するためには、このカメラの小型化・内視鏡スコープ先端への装着などの工夫が必要と考えている。この計画を推進すべく努力を継続すると同時に、安全性の検証や新たな問題点を確認するためにも動物実験を考慮している。血液生化学的検査・サイトカイン等の基礎的データ取得、録画画像による評価を行う予定。
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