内視鏡外科手術は低侵襲・拡大視効果による繊細な手術という大きな利点を持ち、患者さんにとって恩恵がある手術である。しかしながら、欠点として挙げられるのが視野外の操作確認ができない(死角の存在)ことで、安全性を高めるために取り組むべき課題である。我々はこの課題に取り組むべく、安全な腹腔鏡下手術を確立するためのシステムの開発に取り組んできた。 本研究では、全天球カメラ(360度の画像情報)を利用して、腹腔内に潜り込んだ状態(没入型)の視野を確保できることに成功した。画像情報をリアルタイムに取得できるように改善されたことを応用して、画像情報をコンピュータで処理しヘッドマウントディスプレイにリンクさせることができた。つまり、術者がまるで腹腔内に潜り込んだ小人のような感覚でリアルタイムの画像を取得することができる。例えば振り返るとトロッカーをとおして鉗子が入ってくる画像を腹腔内から観察することができる。違う角度から観察することで安全性が高まることは確実と考えている。 昨年度に施行した、全天球カメラから得られる情報が腹腔鏡下手術の安全性を向上させる可能性があるかどうか検証するための実験で、全天球カメラを用いることで有意に多くの情報をより早くより確実にとらえることができることを確認した。現在結果を踏まえて論文作成しており、Surgical Endoscopy(Impact factor:3.747)に投稿予定である。
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